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魚油などのEPAは動脈硬化の「薄い」プラークに優先取り込みされる-浜松医大ほか

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2019年11月25日 PM12:30

オメガ3系脂肪酸は動脈硬化のどのようなプラークに取り込まれやすいのか

浜松医科大学は11月20日、動脈硬化モデルマウスに経口投与したEPA()が、線維性被膜の薄いプラークに優先的に取り込まれることを見出したと発表した。この研究は、同大細胞分子解剖学講座佐藤智仁特任助教、瀬藤光利教授、理化学研究所生命科学研究センターメタボローム研究チーム、持田製薬株式会社、地方独立行政法人大阪産業技術研究所ナノマテリアル研究室の共同研究によるもの。研究成果は、米国心臓協会(AHA)の学術雑誌「Arteriosclerosis, Thrombosis, and Vascular Biology」に掲載されている。


画像はリリースより

動脈硬化が進むと血管壁に脂質やマクロファージの死骸、増殖した血管平滑筋細胞などが集積し、いわゆる「プラーク」が形成される。プラークを覆っている線維性被膜が破綻し、コレステロールを主成分とする沈着物が血管内に漏出すると、血栓を作って容易に血管を閉塞させてしまう。これが心臓で発生すると心筋梗塞になる。一般的に、線維性被膜の薄いプラークは、破綻しやすい不安定なプラークと考えられている。魚油で知られるオメガ3系脂肪酸のEPAやDHA(ドコサヘキサエン酸)が、抗動脈硬化作用を持つことや、動脈硬化のプラークに集積することは過去に報告されているが、プラーク内でどのような分布を示すか、どのようなプラークに取り込まれやすいか、また、取り込まれる際に他の脂質分子とどのような関連があるかについては、これまで不明なままだった。

線維性被膜の薄い不安定なプラークに優先的に取り込まれる

研究グループは、動脈硬化モデルであるApoe-/-マウスにEPAを投与し、プラークが形成されやすい大動脈内にできたプラークを質量顕微鏡により解析することで、EPAは線維性被膜の厚いプラークに比べて、薄いプラークにより多く取り込まれやすいことを見出した。また、オメガ3系脂肪酸はプラークの血管内腔側に多く分布し、深部にかけて少なく分布することや、主にコレステロールエステルの形態で取り込まれることが明らかとなった。さらに近年、炎症を収束させる機能を有するとして注目を集めているオメガ3系脂肪酸代謝物の12-HEPE(12-hydroxy-eicosapentaenoic acid)や14-HDoHE(14-hydroxy-docosahexaenoic acid)のプラーク内分布イメージングに成功し、経口投与したEPAやDHAがプラークの局所において、抗動脈硬化作用を示す様子を視覚的に捉えることに成功した。

今回の研究成果は、高解像度のイメージングを可能とするマトリクス支援レーザー脱離イオン化法(MALDI)や、遊離脂肪酸とその代謝物の検出を得意とする脱離エレクトロスプレーイオン化法(DESI)、遊離脂肪酸とフラグメントの脂肪酸の総数を検出することに特化した銀ナノ粒子を用いたnano-PALDI法など、複数のイオン化手法と質量顕微鏡装置を用いることにより、遊離脂肪酸や、他の脂質分子から分離した脂肪酸、脂肪酸代謝物などさまざまな形態の脂質分子の分布を解析できることを示しており、これら手法は他の様々な脂質関連疾患の研究へも応用可能だという。

また、EPAがフォスファチジルコリンのような他のリン脂質ではなく、主にコレステロールエステルとしてプラーク内へ取り込まれることは、動脈硬化の元凶と考えられがちなコレステロールが、同時にEPAの運搬を担う運び屋として機能していることを示している。これは、単に血中コレステロールの低下のみを動脈硬化治療の目標とするのではなく、血管内の脂質全体をコントロールすることの重要性を示唆するもの。EPAなどのオメガ3系脂肪酸が被膜の薄いプラーク、すなわち不安定プラークへ優先的に取り込まれることは、不安定なプラークを有する患者を対象として、早期にEPAによる治療介入を行うことで、プラーク破綻、心筋梗塞の発生率を抑えることができる可能性を示唆している。研究グループは、「今回の発見は、被膜の薄いプラークを有する患者を対象として、早期にEPAによる治療介入を行うことで、プラーク破綻、心筋梗塞の発生率を抑えることができる可能性を示唆しており、創薬研究や被膜の薄いプラークを有する患者群を対象とした臨床研究などへ発展することが期待される」と、述べている。

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