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【京都桂病院】PBPMで呼吸機能改善-薬剤師が吸入デバイスを選択

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2019年11月22日 AM10:30

京都桂病院が実施した「プロトコールに基づく薬物治療管理」()によって、(COPD)患者の吸入デバイスの選択を薬剤師が担当した結果、以前の通常診療群と比べて呼吸機能が1.5倍改善することが明らかになった。臨床症状も大きく改善し、急性増悪リスクの低下も認められた。薬剤師が外来で患者面談に時間を費やし、呼吸機能や身体機能に加え、生活スタイルや意向を汲み取った上で、使いやすい吸入デバイスを患者と一緒に選んだことが奏効した。来年度以降、地域薬局を含めたPBPMに発展させたい考えだ。

塩飽氏

PBPMに沿って薬剤師は、初回診察時に呼吸器外来医師から吸入療法開始の指示を受け、外来で患者と面談する。事前に医師などと合意した標準的な基準で患者を評価し、最適な吸入デバイスを選んで医師に提案。承認を得た場合に使い方などを患者に説明する。

吸入デバイス選択に要する時間は、初回は患者1人当たり30分ほど。2回目以降の外来受診時には、医師の診察前に薬剤師が15分ほど面談。吸入操作の理解度や副作用などを評価し、必要に応じて吸入デバイスの変更を医師に提案して診察に引き継ぐ。

2016年4月から臨床研究として開始し、効果を検証するため、薬剤師が吸入デバイスを選択した患者48人と、PBPM実施前に医師が吸入デバイスを選択した通常診療群37人を比較。1秒間に吐き出せた息の量(FEV1)の治療開始から半年後の改善度を比べたところ、通常診療群では平均240mL増えたのに対し、薬剤師選択群では平均380mLもの増加が認められた。

同院薬剤科の塩飽英二氏は「ベースラインから100mL以上増加すれば、臨床的に意味のある改善と言われている。吸入療法は2種類の合剤の使用が標準的で、一般的に200~250mL改善する。通常診療群の治療効果は一般的な効果と同等で、薬剤師選択群では1.5倍改善する結果だった」と説明する。

息切れや倦怠感など臨床症状を表すスコアであるCATの変化を薬剤師選択群で調べると、治療開始から半年後にスコアが大きく低下。約9割の患者でCOPD急性増悪リスクの低減につながる2点以上の改善が認められた。息切れの臨床症状を現すmMRCも大きく改善していた。

医師が多忙な外来診療の中で、様々な種類の中から患者に最適な吸入デバイスを選び出すのは容易ではない。薬剤師が時間をかけて患者と対話し、様々な因子を考慮した上でデバイス選択を行うことで吸入薬が持つ力を出し切らせて、薬の効果を最大化できた可能性があるという。

また、医療者とのコミュニケーションを評価した結果、患者自身がCOPD治療の目標を自覚し、自ら治療に臨んでいることも分かった。塩飽氏は「医療者が一方的に選択するのではなく、患者の意見も聞いて、使いやすく続けられる吸入デバイスを患者と一緒に決めたことが効果を向上させたのではないか」と話す。

吸入療法における薬剤師の役割としては吸入指導が重視されているが、同院では一歩踏み出し、吸入デバイスの選択まで担当するようになった。今後、エビデンスを積み重ねていくことで、医師は薬物療法の骨格を示し、細かな薬剤選択や調整は薬剤師が担うという新たな役割分担の確立につながる可能性がある。

来年度以降、地域全体にPBPMの輪を広げる計画もある。薬局薬剤師を対象に勉強会を開催し、同院で実践してきたプロトコールを説明。その上で、病院と各薬局がPBPMの合意書を締結し、薬局薬剤師に外来通院2回目以降の吸入デバイス変更や、初回診察時のデバイス選択を担ってもらいたい考え。まだ構想段階だが、今後詳細な枠組みを検討していく予定だ。

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