白内障だけでなく、緑内障手術でも重要となる結膜の温存
兵庫医科大学は11月21日、脱臼水晶体・眼内レンズに対する特殊な白内障の手術において、同大眼科学石川裕人講師らの研究グループが考案した改変した眼内レンズ強膜内固定法が、従来のものより低侵襲であることを証明したと発表した。研究成果は、「Acta Ophthalmol」に掲載されている。
眼内レンズ(IOL)強膜内固定法は世界で広く使われている術式で、水晶体嚢を支えるチン小体脆弱例における通常の白内障手術施行が困難な症例や、すでに挿入したIOLが眼内に落下している症例で、IOLを強膜に固定する場合に行われる。
この水晶体・IOLが脱臼する状態は「偽落屑症候群」という緑内障の一種であることから、強膜内固定法を施行する必要のある眼は、将来的に緑内障手術が必要になる可能性がある。緑内障手術をするうえで、結膜が正常であることは非常に重要な手術成功の因子である。そこで研究グループは、従来のIOL強膜内固定法を改変し、できる限り結膜を温存することを念頭に置いた、低侵襲なIOL強膜内固定法を開発することを目指した。
手術効果はそのままに、術創を約33%減
研究グループは、同大眼科において、脱臼水晶体・IOL、無水晶体眼を呈し、IOL強膜内固定法を行った54例60眼を対象に、診療録から後向きにデータを抽出。術前後の視力変化、惹起乱視、合併症の有無などを検討した。術者は単独で石川氏が全例行っており、2017年10月以前は従来のIOL強膜内固定(術創6か所)、以降は改変IOL強膜内固定(術創4か所)を行っており、両群で検討を行った。
その結果、両群は手術効果に差がなかったものの、改変IOL強膜内固定法では、術創が6か所中2か所減少した(33.3%減)。このことから、硝子体手術ポートを介した改変IOL強膜内固定法は、従来の手術効果はそのままに、結膜を温存するという低侵襲化を実現したと考えられる。なお、両群で視力に関連する因子や合併症に差はなく、改変IOL強膜内固定法は、術創が少なく、より低侵襲であることがわかったという。
しかし、同研究は後向きであり、術者ごとの手術習熟度の問題がある。研究グループは、「今後角膜切開で脱臼水晶体・IOLの処理や新規IOLの挿入を行えば、さらに結膜温存することが可能となる」と、述べている。
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・兵庫医科大学 研究成果