糖尿病治療を受けている患者667名、患者家族238名対象のインターネット調査
日本イーライリリー株式会社は10月29日、糖尿病治療を受けている患者667名と、糖尿病患者の家族238名を対象に「重症低血糖」に関するインターネット調査を2019年8月に実施し、その調査結果を発表した。
低血糖は、血糖値が正常範囲以下にまで下がった状態のことで、主な症状は、冷や汗、動悸、意識障害、けいれん、手足の震えなどだ。低血糖の症状が起きた際に適切な対処を行えば回復するが、急激に血糖値が低下して対処が間に合わない場合や、自覚症状が無い状態で血糖値の低下が進行する場合などは、患者のみでは対処できない「重症低血糖」に陥ることがある。重症低血糖に陥った場合、大脳機能が低下して昏睡や痙攣、不可逆性の脳障害などを起こす可能性がある。日本国内における重症低血糖が原因と考えられる救急搬送は、推計で年間約2万件発生しているとされる。
同調査の結果、低血糖について「内容を詳しく知っている」「ある程度内容を知っている」と回答した患者は77%、家族は76%だったが、重症低血糖については、患者25%、家族40%という結果だった。また、重症低血糖について「聞いたことがない」と回答した患者は44%、家族は37%となり、糖尿病患者・家族において重症低血糖に関する知識や認識が不足している状況がうかがえた。
画像はリリースより
実際に重症低血糖の経験がある患者215名に、重症低血糖を起こした時の状況を質問したところ、患者の60%は自覚症状が無い状態で発症していたことが明らかになった。また、重症低血糖を起こした際に近くにいた人物で最も多かったのは「家族」で47%だった。「知人・友人」(19%)、「周りにいた他人」(14%)、「医療従事者」(5%)、「その他」(8%)と続き、「覚えてない」が14%であった。
「重症低血糖の予防・対処のサポートをしたい」家族は約8割
家族と重症低血糖について情報を共有していなかった患者は、74%だった。その理由としては、「糖尿病治療については家族は関与していない(32%)」「家族を不安にさせたくない(15%)」など、家族との関わり方に関するものや、「何を話していいのかわからない(22%)」「重症低血糖は自分には起こらない(19%)」といった、重症低血糖に対する低い認識による回答も見られたという。
重症低血糖に対して「不安だ」「非常に不安だ」と感じている患者は43%、家族は66%。一方で、重症低血糖経験者では78%、経験者家族では92%が「不安だ」「非常に不安だ」と感じており、経験の有無により重症低血糖に対する考え方が異なることが考えられる。重症低血糖経験後の日常生活への影響については、重症低血糖経験者の67%、経験者家族の83%に何らかの日常生活の影響があったことが明らかとなった。
「同居する糖尿病患者さんに対して重症低血糖の予防・対処のサポートをしたいと思いますか?」という問いに対しては、「非常にしたいと思う」「したいと思う」と回答した家族が79%となり、重症低血糖の経験の有無に関わらず、家族のサポート意向は強いことがうかがえた。
同調査を監修した、東京大学大学院医学系研究科糖尿病・代謝内科教授の山内敏正氏は、重症低血糖は未然に防ぐことが可能だとし、「かかりつけの医師、家族や身近な人とも情報共有して相談する社会環境の整備が急務」とコメントした。また、いざという時に家族や身近な人が患者をサポートできるよう、重症低血糖の症状や対処法について情報共有することを呼びかけている。
同じく同調査を監修した、神戸市立医療センター中央市民病院糖尿病内分泌内科医長の岩倉敏夫氏は、「低血糖を対処できていたとしても、低血糖を繰り返すことにより自覚症状が失われて重症化することがある」とし、糖尿病患者は重症低血糖を自分ごとと捉えて、かかりつけの医師に相談し、家族へ情報を共有するよう呼びかけた。
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・日本イーライリリー株式会社 プレスリリース