ゲフィチニブ単剤投与と比較、全生存期間、無増悪生存期間を評価
東北大学は11月13日、EGFR遺伝子変異陽性の進行肺がんにおける新たな治療法の効果について報告したと発表した。これは同大大学院医学系研究科緩和医療学分野の井上彰教授らのグループによるもの。研究成果は「Journal of Clinical Oncology」電子版に掲載されている。
画像はリリースより
肺がん患者で EGFR遺伝子変異陽性は、日本人で約3割。対して、欧米では1割である。井上教授らは2010年、EGFR遺伝子の異常によって引き起こされる肺がんに対して、分子標的薬である「ゲフィチニブ」が従来の抗がん剤治療と比較して高い有効性を示すことを世界に先駆けて報告している。以来、同治療法は国際的な標準療法となっている。一方で、ゲフィチニブ治療中に病態が悪化した患者の約3割が、その後、有効とされる別の抗がん剤治療へ移行できなかった点が課題だった。そこで、分子標的薬と抗がん剤治療を併用する新たな治療法の開発に取り組んだ。
併用療法の全生存期間は50か月超え、標準治療より延長
今回の研究では、ゲフィチニブと抗がん剤併用療法を170人に、ゲフィチニブ単剤療法を172人に対して実施、全生存期間、無増悪生存期間などを評価した。併用療法の全生存期間の中央値は50.90か月(41.77-62.50)に対し、ゲフィチニブ単剤では38.80か月(31.10-47.33)だった。併用群の生存期間の中央値が50か月を超え、進行肺がんにおける治療法ではこれまで例のない高い効果を示した。
副作用として、白血球や血小板の減少は認められたが、これらは従来から知られた副作用で、十分に制御可能だった。また、分子標的薬でまれに認められる薬剤性肺炎などの重い副作用の頻度も増えることはなかった。
昨今話題の免疫療法(免疫チェックポイント阻害剤)は、EGFR遺伝子のようながんの発生において直接的に重要な役割を果たす遺伝子の影響が大きい肺がんには効果が乏しいとされている。「抗がん剤を同時に複数投与することで安全性の点で懸念があったが、従来の標準治療法と比べて良好な結果が得られた。今回報告された治療法は、新たな標準療法として多くの肺がん患者さんの助けとなることが期待される」と、研究グループは述べている。
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