X線で描出できない軟骨、超音波で直接的に評価
東邦大学は11月6日、関節超音波を用いて軟骨損傷の度合いを半定量的に評価し、その妥当性を実証したと発表した。これは同大医学部内科学講座膠原病学分野の小倉剛久講師と亀田秀人教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Arthritis Care & Research」に掲載されている。
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関節リウマチは持続性・破壊性の関節炎により骨および軟骨の損傷が生じることで関節機能障害をもたらす。骨の損傷(骨びらん)が関節リウマチの特徴として知られており、関節機能には骨損傷よりも軟骨損傷の方がむしろ重要な影響を及ぼすことが報告されている。単純X線で直接評価できるが、軟骨はX線で描出されないため、これまでは骨と骨の隙間(関節裂隙)の狭小化を軟骨損傷の評価として代用してきた。
超音波による新手法は関節X線による関節裂隙狭小化スコアと良好な相関
研究グループは、2011~2015年に東邦大学医療センター大橋病院膠原病リウマチ科を受診した関節リウマチ患者103人と健常対照者42人を対象として、両手第2~第5指の近位指節間関節と中手指節間関節の計16関節の軟骨厚を関節超音波によって計測。さらに軟骨損傷の度合いを関節超音波による簡便な3段階の半定量法(関節毎のスコアが0~2、評価16関節の合計0~32)で評価した。
その結果、健常対照者と比較して関節リウマチ患者では有意に軟骨厚が減少し、軟骨損傷の半定量法スコアが、健常対照者が4点、関節リウマチ患者では2倍の8点(いずれも中央値)と高値であるとわかった。また、関節リウマチ患者においては、軟骨厚の計測値、軟骨損傷スコアのいずれもが、従来の軟骨損傷の推定法である関節X線における関節裂隙狭小化スコアと良好な相関を示した。さらに、関節リウマチに長く罹患しているほど軟骨損傷が進行することも判明した。
軟骨損傷の半定量法スコアはOMERACT(Outcome Measures in Rheumatology)という国際的な臨床評価法の検討組織から本年論文発表されたばかりの方法。「関節超音波検査は、従来用いられていた関節炎と骨損傷の評価のみならず、軟骨損傷の評価にも適しており、関節リウマチにおける関節病変の包括的評価が可能なツールであることを実証した」と、研究グループは述べている。
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・東邦大学 プレスリリース