採卵不可能と考えられていた「破裂済み卵胞」について研究
千葉大学は11月6日、従来の体外受精では利用されてこなかった「排卵済み」とされる卵胞から高い確率で卵子を回収できることを見出し、このような卵子を使った体外受精に成功したことを発表した。この研究は、同大大学院医学研究院の生水真紀夫教授と、Natural ART Clinic 日本橋・寺元章吉理事長らの研究グループによるもの。研究成果は、「サイエンティフィック・リポーツ」に掲載されている。
画像はリリースより
卵巣にある卵胞の嚢には卵胞液が溜まっており、卵子が十分に育つと卵胞が破裂して、卵胞液とともに卵子は卵胞外に排出される。排卵された卵子は卵管を通って子宮に移動し、子宮内で育つ。
体外受精では、卵子が成熟した頃に成熟卵胞を針で刺し、吸引して卵子を採卵、その後、胚移植する。これまで、卵胞が一旦破裂すると卵胞から卵子が押し出され、卵子は採れないと考えられてきた。そのため、破裂済み卵胞では治療を諦めざるを得なかった。
破裂済み卵胞43%から卵子を回収することに成功、体外受精の妊娠率向上に期待
研究グループは今回、破裂済み卵胞の全てが卵子を押し出しているわけではないことを突き止め、破裂済み卵胞を穿刺・吸引することで、高い確率で卵子を回収できることを示した。実際に、587名の不妊症患者の破裂済み卵胞を穿刺し、255名(43%)から卵子を回収できたという。この255名に体外受精を実施したところ、28名(11%)に健康な新生児が生まれた。
また、40%以上もの卵子が、破裂後も卵胞の中に留まっていることが判明。これまで原因不明とされていた不妊の中には、卵胞が破裂しても卵子が押し出されずに「無排卵」となっている事象が含まれている可能性が示唆された。
研究グループは、「破裂済み卵胞から健康な卵子を採れるという発見は、これまでの体外受精に見直しを迫るものだ。成熟卵胞のみを使ったこれまでの体外受精では、今回のような新しい体外受精による成功は実現できなかった。今後の研究を進め、体外受精で利用できる卵子数が増えることで、体外受精による妊娠率がさらに高まることが期待できる」と、述べている。
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