超早期の肺転移病巣では肺細動脈が腫瘍細胞で閉塞
東北大学は11月6日、がんにおける肺転移の超早期段階では、血管を介する従来の薬剤送達は、治療には有効でないことが示されたと発表した。この研究は、同大大学院医工学研究科腫瘍医工学分野の小玉哲也教授とスフバートル アリウンブヤン特任助教、同大学病院阪本真弥講師、森士朗講師らの研究グループによるもの。研究成果は、国際科学誌「Scientific Reports」電子版で掲載された。
画像はリリースより
研究グループは、現在の臨床画像診断システムでは検出できない、100µm以下の超早期の肺転移病巣を再現できる肺転移マウスモデルを開発。マイクロX線CTの解析により、肺転移モデルでの肺内の総血管長、総血管体積、総血管分岐数が著しく減少していることが明らかになり、病理組織像解析の結果、肺細動脈が腫瘍細胞で閉塞されていることが判明した。すなわち、血行性に投与された低分子抗がん剤は、血管内の腫瘍塞栓により、肺転移巣には十分に送達されないことが示されたという。
低分子抗がん剤だけでなく高分子抗がん剤でも、十分な薬剤を送達できない可能性
腫瘍新生血管に特徴的なEnhanced permeability and retention(EPR)効果は、高分子製剤(10-200nm)の腫瘍への集積に有効なことが動物実験で示されている。しかし、同研究では、超早期の肺転移病巣への蛍光粒子(直径145nm)の集積が確認されなかった。すなわち、血行性に投与された高分子製剤のEPR効果にもとづく肺転移巣への薬剤送達は期待できないことが明らかになった。
今回の研究結果から、肺転移の超早期段階における血管を介した全身化学療法においては、低分子抗がん剤だけでなく高分子抗がん剤でも、肺転移病巣に十分な薬剤を送達させることができないことが示唆された。これは、従来の全身化学療法に代わる新たな薬剤送達法の開発、ならびに新規な治療法の開発の必要性が求められることを意味している、と研究グループは述べている。
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