■来夏に過渡的申請受付
日本医療薬学会は、薬局薬剤師を対象にした「地域薬学ケア専門薬剤師」制度を立ち上げた。今臨時国会で成立予定の改正医薬品医療機器等法に、癌などの専門的な薬学管理に対応できる「専門医療機関連携薬局」が明記され、認定に向け高い専門性を持つ薬剤師の配置に対応した制度を構築することになった。癌領域の要件を満たした場合に「地域薬学ケア専門薬剤師(がん)」として認定する。過渡的措置での認定申請の受付を来年8~9月頃から開始し、2021年1月には初の認定取得者が誕生する計画だ。
20年から24年までは過渡的な要件で地域薬学ケア専門薬剤師の認定を行う。具体的には、▽1回以上の学会発表(筆頭)もしくは1報以上の論文(筆頭)▽学会等の参加・発表単位を20単位以上取得▽5年以上の実務歴――などの要件を満たす必要がある。
癌領域の要件を満たした場合には「地域薬学ケア専門薬剤師(がん)」として認定する。認定要件のうち学会発表や論文は癌に焦点を当てた内容が求められるほか、がん専門薬剤師集中講義の受講が必要になる。
認定は更新制とし、1回目の更新までに正規要件を満たせば正式に認定。満たせなければ暫定資格は消失する。
「地域薬学ケア専門薬剤師(がん)」の正規要件は、▽5年間の研修▽癌領域に関する学会発表2回もしくは癌領域の論文1報(筆頭)▽地域薬学ケアに関する50症例+癌に関する20症例▽学会等の参加単位を50単位以上――など。
特に難度が高いのは5年間の研修だ。研修を受けやすくするため、基幹施設と連携施設という枠組みを新設した。暫定的に認定を受けた「地域薬学ケア専門薬剤師(がん)」の更新を目指す場合、薬局薬剤師は週1回程度、がん診療連携拠点病院など同学会認定のがん専門薬剤師研修施設に出向き、基幹施設のカンファレンスなどに参加して研修する。
一方、勤務する薬局を基幹施設の連携施設として位置づけ、日常業務を行いながら研修する。同学会が定めた基準を満たした薬剤師がいる薬局が連携施設になれる。
専門薬剤師育成委員会委員長の寺田智祐氏(滋賀医科大学病院薬剤部長)は「病院完結型から地域完結型医療へとシフトし、地域連携の充実が求められる中、インフラ整備や底上げに役立つ専門薬剤師制度として新設した」と狙いを語る。
奥田真弘会頭(大阪大学病院薬剤部長)は「基幹施設と連携施設の確保が運用のカギになる。全国に296施設あるがん専門薬剤師研修施設には、薬局薬剤師の研修受け入れに手を上げてもらいたい。連携施設と基幹施設のマッチングは、各都道府県薬剤師会の協力を仰ぎたいと考えている。日本病院薬剤師会、日本薬剤師会の協力を得て進めたい」と話す。
制度新設に合わせ、既存の認定・専門薬剤師制度も見直した。基幹・連携施設の枠組みを各制度に設けたほか、「認定薬剤師」制度の名称を「医療薬学専門薬剤師」制度に変更。1年間の研修、臨床実績10件の提出を必須にした。暫定期間を設けて移行する。
一方、要件の厳しさから40人の取得にとどまっていた薬物療法専門薬剤師制度は、認定要件のハードルを下げた。新規認定における研究業績を軽減し、更新に必要な症例数を50から20に減らした。指導薬剤師の新規認定における研究業績を軽減し、症例提出の要件を削除した。
医療薬学専門薬剤師は、主に薬系大学臨床教員が目指す資格として、薬物療法専門薬剤師は主に病院薬剤師が目指す資格として位置づけを明確にした格好だ。
がん専門薬剤師制度は、専門薬剤師の資格要件に会員歴と研究実績を追加したほか、専門薬剤師の更新要件に必要な症例数を50から20に減らした。