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熱帯熱マラリアの病原性に関連する原虫タンパク質を複数同定-東北大

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2019年11月01日 AM11:00

マラリアの重症化には原虫と宿主の数多のタンパク質が関わる

東北大学は10月30日、マラリア感染赤血球内でタンパク質輸送を司る複合体中の構成タンパク質について網羅的なネットワーク地図の作製を行い、熱帯熱マラリアの病原性に関連する原虫タンパク質の同定に成功したと発表した。この研究は、東北大学大学院農学研究科 加藤健太郎教授(帯広畜産大学原虫病研究センター客員教授)らのグループによるもの。研究成果はCell出版の「iScience」に掲載されている。

マラリアは、結核、エイズとともに世界三大感染症の1つに数えられており、蚊の吸血によってヒトに感染する原虫による循環器疾患。赤血球内での原虫の増殖に伴う赤血球の破壊による貧血を主症状としている。感染者は、亜熱帯・熱帯地域に多く存在し、年間約2億人、死亡者は約43万人にのぼると報告され、その対策が急務とされている。熱帯熱マラリア原虫は、ヒトに感染するマラリア原虫の中でも最も重篤な病態を引き起こす。ヒトの赤血球への感染が成立すると、数多の原虫タンパク質や宿主タンパク質を感染赤血球の細胞質へと放出させた後、感染赤血球の膜上に輸送させることで、赤血球の構造そのものを激変させる。この結果、感染赤血球同士が塊を形成し、より強固に血管内皮へと結合し、脾臓での排出を避けるとともに毛細血管の閉塞が多臓器不全を促し、マラリアの重症化をもたらす。


画像はリリースより

網羅的なネットワーク地図を作成して同定に成功

研究グループは今回、まず熱帯熱マラリアの病態発現機構と重症化機構を解明するため、感染赤血球内で原虫から赤血球膜上に輸送されるタンパク質の網羅的解析を試みた()。熱帯熱マラリア原虫の感染赤血球内でのタンパク質輸送を司る複合体が形成する小胞「」の構成タンパク質であることが明らかとなっていた SBP1(Skelton-binding protein 1)と複合体を形成しているタンパク質の同定を、質量解析によって行った。質量解析の結果、SBP1と複合体を形成しているタンパク質の候補因子として、205の原虫タンパク質と51の宿主タンパク質の同定を行った。得られた網羅的遺伝子発現データについて、遺伝子オントロジー解析を行った。

次に、上記の解析で得られた原虫及び宿主タンパク質について、実際にマウレル裂に局在し、マラリア感染赤血球内のタンパク質輸送に関わっているか、共焦点顕微鏡と電子顕微鏡観察によって局在の同定を実施。その結果、実際に輸送されているタンパク質の新規同定に成功した。また、輸送タンパク質に保存されているとされるアミノ酸配列(PEXEL配列)の有無に関係なく、感染赤血球膜へと輸送されるタンパク質の新規同定に成功。さらに、同定した各原虫タンパク質をノックアウトした原虫の作製を試み、マラリア原虫のライフサイクルの中で赤血球内でのステージに必須の遺伝子であるか解析を行った。必須である場合はノックアウト原虫を作製することができない。この結果、複数の必須遺伝子の同定に成功した。また、野生株と比較して、作製できたノックアウト原虫において感染赤血球と血管内皮レセプターとの結合が増強されたことから、感染赤血球と血管内皮との結合に関わる原虫タンパク質の同定にも成功した。

研究グループは、「薬剤耐性原虫の出現により新規マラリア薬が求められ、ワクチンについて未開発であるマラリア対策の現状に対して、これらの研究成果が新たな重症化対策技術の開発につながることが期待される」と、述べている。

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