TRPV4タンパク質の異常活性化で、てんかんを引き起こす神経活動が増強
群馬大学は10月30日、てんかん病態が悪化する分子メカニズムを解明したと発表した。この研究は、同大大学院医学系研究科分子細胞生物学分野の柴崎貢志准教授の研究グループによるもの。研究成果は「Laboratory Investigation」にオンライン掲載された。
画像はリリースより
日本国内のてんかん患者は推定100万人とされており、患者は日常生活で突発的に起こるけいれん発作に苦しめられている。既存のてんかん治療薬は効能が低く、肝臓障害などの副作用などの課題がある。
研究グループは今回、てんかん病態時の脳内温度に注目し、新たに開発した局所脳内温度計を用いて、てんかん原性域の温度を正確に測定した。その結果、てんかん患者の脳は正常な患者の脳と比べて約1℃発熱していることが明らかになったという。この発熱により、脳内温度をモニターしているTRPV4タンパク質が異常活性化し、てんかんを引き起こしている神経活動がさらに増強するメカニズムもわかった。
てんかん原性域を30℃まで冷却し、発作を完全に抑制
研究グループは、てんかん原性域のみを効率的に冷やして、TRPV4の異常活性化を抑えるとてんかん発作が治まるのではないかと仮説を立て、独自の脳局所冷却システムを作製。同システムをてんかんマウス脳に埋め込み、てんかん原性域を30℃(30℃はTRPV4 を完全停止させることができる温度)まで冷却すると、てんかん発作を完全に抑制することができたという。脳冷却装置が、てんかん治療器具として有効であることを見出した。
また、脳冷却の代わりに、てんかん原性域にTRPV4阻害薬を注入した場合も、てんかん発作を抑制することを確認。てんかんの新規治療薬としてTRPV4阻害薬が有効であると考えられた。
今回の研究により、てんかん病態が悪化する分子メカニズムが明らかになり、TRPV4阻害薬による新たな治療法確立の可能性が見出された。今後、新たな治療法開発が期待される。
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