国内では定量化されていなかった発達障害の子どもの不安の高さを調査
神戸大学は10月29日、発達障害の子どもは発達障害でない子どもと比較して顕著に不安が高く、特に自閉症スペクトラム障害(ASD)の子どもで不安が高いことが明らかになったと発表した。この研究は、鳥取大学教育支援・国際交流推進機構の石本雄真准教授、徳島文理大学人間生活学部児童学科の松本有貴教授、および同大大学院人間発達環境学研究科の山根隆宏准教授らの研究グループによるもの。研究成果は「Journal of Autism and Developmental Disorders」に掲載された。
画像はリリースより
ASD、注意欠如多動性障害(ADHD)、(限局性)学習障害(LD)、知的能力障害(ID)といった神経発達障害の子どもは、いろいろなことを怖がる、心配が多いなど高い不安を持つことが海外の研究で明らかになっている。高い不安は、人と関わる機会を減らす、新しいことに挑戦する機会を少なくする、さまざまな学習の機会を奪うなど、不登校などの二次的な問題にもつながる。また、不安の高さにより人と関わる機会を失うことで、発達障害の特性から生じるコミュニケーションの苦手さを補うことができず、コミュニケーションの苦手さがさらに不安を高める、という悪循環に陥ることも指摘されている。しかし、これまで日本の発達障害の子どもを対象に、日常的な生活場面での不安の高さを調査したものはなかった。そこで、研究グループは、国内では定量化されていなかった発達障害の子どもの不安の高さを調査した。
高い不安だけでなく、多動や友人関係などでも困難さを経験
今回の研究では、放課後等デイサービスを利用する発達障害の子ども(6~12歳)を対象に調査を行い、国内の発達障害の子どもの不安の高さを調査。調査の結果、日本においても、発達障害の子どもは発達障害でない子どもと比べて不安が高く、統計的に大きな得点差がみられることが明らかになった。特にASDの子どもではさらに不安が高いこともわかったという。また、高い不安だけでなく行動的な問題(多動や友人関係など)でも、発達障害の子どもは発達障害でない子どもと比べて、より困難さを経験していることが明らかになった。
発達障害の子どもの不安の高さは、さまざまな問題につながることが知られている。日本における発達障害の子どもへの支援は、学習の問題や行動の問題を対象としたものが多く、不安の高さに焦点を当てたものはあまりみられない。研究グループは、不安の高さをはじめとする気持ちの問題を対象とした支援プログラムを開発し、実践・検証している。今後は、同プログラム活用の推進を含め、発達障害の子どもの不安に対応する支援や高い不安から生じる問題に対応する支援を行っていくこと、さらに発達障害の子どもが高い不安によって悩まされていることが広く知られ、不安への支援が必要であるという理解が深まることを期待する、と研究グループは述べている。
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