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「大脳皮質-基底核投射神経細胞」が、幼期の発声学習に必要であることが判明-北大

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2019年10月25日 AM11:15

ヒトと同じ発声学習ができるキンカチョウを用いて研究

北海道大学は10月22日、キンカチョウを用いて、ヒトを含む哺乳類にも存在する大脳皮質から基底核へ投射している神経細胞の発声学習・生成における役割を明らかにしたと発表した。この研究は、同大大学院理学研究院の和多和宏准教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Proceedings of the National Academy of Sciences」(PNAS, 米国科学アカデミー紀要)に掲載されている。


画像はリリースより

ヒトの言語や小鳥の歌は、親の発声パターンを真似ることで後天的に獲得()される。発声学習ができる動物種は非常に限られており(ヒト、鯨・イルカ類、コウモリ類、ゾウ類、オウム・インコ類、ハチドリ類、鳴禽類のみが現在知られている)、小鳥はヒトの言語学習を研究する動物モデルとして注目されている。

さらに、ヒトを含む哺乳類と小鳥の脳内は、発声学習・生成に関わる脳内神経回路がとてもよく似ている。その神経回路を作る細胞のために、歌神経核()に大脳皮質から大脳基底核へ神経線維を伸ばしている神経細胞(-基底核投射神経細胞)が存在する。小鳥には、さえずっているときに細胞ごとに決まったタイミングで神経発火をする性質があり、この神経発火パターンが運動学習・制御に重要な大脳基底核に時間情報を与えているのではないかと推察されていた。しかし、実際の神経機能は明らかにされていなかった。

大脳皮質-基底核投射神経細胞は、学習後の運動パターンの維持には重要な役割を持たず

今回の研究では、この大脳皮質-基底核投射神経細胞の機能を明らかにすべく、細胞死(アポトーシス)を人工的に誘導することができるタンパク質を、この神経細胞のみに出し、選択的に殺した。その結果、発声学習前の若鳥のときにこの大脳皮質-基底核投射神経細胞をなくすと、その後の歌学習がうまくできず、成鳥になってもキンカチョウ本来の歌パターンでさえずることができなかった。これに対し、歌学習後の成鳥時から大脳皮質-基底核投射神経細胞をなくした場合では、学習した歌パターンに変化はなく、その後、聴覚剥奪後の歌の変化も、正常個体と同じように起こることがわかったという。これらの結果は、大脳皮質-基底核投射神経細胞が発声学習時には重要だが、学習後の運動パターンの維持には重要な役割を持たないことを示唆している。

発声学習は、ヒトの言語や楽器、スポーツの習得と同様、感覚や知覚入力と運動機能出力の協調による「感覚運動学習」の一つの学習形態である。小鳥の歌学習と同様に、言語や楽器、スポーツなどの習得にも、今回注目した大脳皮質-基底核-視床ループ神経回路や大脳皮質-基底核投射神経細胞が、重要な役割を担っていることが推測されている。さらに、パーキンソン病や吃音などの運動制御疾患がこれらの神経回路異常と関係していることが明らかになってきている。

研究グループは、「小鳥の脳内の神経回路を構成する細胞群にフォーカスすることで、他の動物モデルでは研究することが難しい発声学習や感覚運動学習の学習臨界期の研究を進めることができると考えている」と、述べている。

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