過剰な回避行動をとる人は痛みが無くなっても恐怖が残存しやすい
畿央大学は10月17日、痛みをともなう運動を過剰に避ける人(全く動かなくなる人)は、痛みが無くなっても恐怖が残存しやすいことと、その行動には性格特性が関わっていることを明らかにしたと発表した。この研究は、同大学大学院博士後期課程の西祐樹氏と森岡周教授らの研究グループによるもの。研究成果は「Frontier Behavioral Neuroscience」に掲載されている。
痛みに対する回避行動は、身体を損傷から保護する短期的な利益があるが、傷が癒えた後続けることで痛みを長引かせる要因になることが知られている。研究グループは、健常者を対象に、タッチパネルを用いた運動課題を行った。この運動課題では、被験者がタッチパネルを塗りつぶしている間は痛み刺激が与えられる。痛みを恐がらない被験者は塗りつぶす行動を続けられるが(=疼痛行動)、痛みを過度に恐がってしまう被験者は塗りつぶし行動を止める(=過剰な回避行動)。加えて、この実験では、特定の運動方向に特定の速度で塗りつぶすと、痛み刺激が弱くなる仕掛けにしていた(=疼痛抑制行動)。この仕掛けをすることで、被験者を「過剰な回避行動をとる人」、「疼痛抑制行動をとる人」、「疼痛行動をとる人」に分類した。
不安になりやすい慎重タイプの性格の人は過剰な回避行動をとりやすい
過剰な回避行動をとる人は、運動の開始時に「運動の躊躇」が認められた。また、この運動の躊躇は、痛みがなくなった消去段階にも残存しており、生理学的データで定量化された恐怖反応も同様に消去段階で残存していた。これは、過剰な回避行動をとる人は、運動恐怖を学習しやすいことを意味するという。一方で、痛みを避けながらでも行動する、痛みを避けることなく行動する人たちは、痛み刺激が無くなると同時に恐怖反応も消失した。
画像はリリースより
痛みをともなう行動についての価値観は、それぞれのグループ間に差はなかったが、過剰な回避行動をとるグループは、損害回避気質や特性不安が高いことが明らかになった。この結果から、過剰な回避行動はその人の性格特性によって決定づけられる可能性が示唆され、不安になりやすい慎重タイプの性格の人では、過剰な回避行動をとりやすいことがわかったという。
今回の研究結果より、回避行動を詳細に評価することの重要性や、臨床場面で個人の痛みを評価する際に個人の気質や過去の経験、思考の側面を配慮することも重要だと示唆された。研究グループは今後、痛みを有する患者の回避行動を定量的に評価し、痛みの慢性化に寄与するのか調査する予定だとしている。