古谷翔太氏(静岡県立総合病院循環器・心臓血管外科病棟主担当薬剤師)は、今年1月から心臓血管外科病棟の患者に対し、医師に代わって薬剤師が内服処方の代行入力している取り組みを発表した。
具体的には、褥瘡予防の軟膏や頓服薬などの継続処方入力、薬剤師の提案を加味した定期処方入力などを実施した結果、時間外処方箋が占める割合がタスクシフト前の49%から36%に減少したほか、他の業務の中断や担当患者以外に対する処方入力などが減少したという。
古谷氏は「処方入力業務の負担が軽減され、医師が業務に集中できることが分かった」との考えを示した。
池末裕明氏(神戸市立医療センター中央市民病院薬剤部副部長代行)は、同院がタスクシフティングで注力する「薬の説明や服薬指導」のうち、経口C型肝炎治療薬と間質性肺炎治療薬の薬剤師外来の取り組みを報告した。
間質性肺炎の薬剤師外来は2017年から開始し、外来診察前に薬剤師が面談を行い、服薬指導や処方提案などを実施。その結果、服薬開始から1年半後に服薬を継続している患者の割合は約30%増加した。
また、14年から開始したC型肝炎の薬剤師外来では、耐性ウイルスと服薬継続の重要性、副作用、服薬アドヒアランスの確認などを行った結果、処方提案384件のうち84%が処方に反映された。アドヒアランスも極めて良好で、ウイルス除去率が99.6%に達した。
パネル討論では、処方の代行入力が医師の負担軽減につながるかどうかについて、望月泉氏(岩手県立病院名誉院長)は「代行入力は医師から非常に好評を得ており、病棟業務全体の改善にもつながる好事例になると考えている」と高く評価。「好事例を集積しつつ、本丸である医師の労働時間抑制につなげるべき」と積極的な取り組みを求めた。
望月氏は、調剤ロボットの活用にも言及。「少子高齢化の進行で、雇用の問題は考えないといけない。地方ほど医師、薬剤師の偏在があるため、IT化を進める方向に行くのではないか」との見方を示した。
池末氏は、多くの病院で薬剤師外来に対応できる若手薬剤師の育成が課題となっている現状を指摘。「まずは診療科と信頼関係を結ぶことが大事だ。入退院時の業務をしっかり行うことで診療科も考えてくれるし、信頼関係の中でバランスが取れる。今頑張っている人に声をかけていきたい」と述べた。