2016・2017年の院内がん登録のデータを集計、小児がんとAYA世代に特化した報告書を発表
国立がん研究センターと国立成育医療研究センターは10月18日、全国のがん診療連携拠点病院などのがん専門施設で実施されている2016・2017年の院内がん登録のデータを集計し、小児がんおよび若年成人(AYA世代)に特化した報告書をまとめたと発表した。
画像はリリースより
20歳未満の小児がんに関しては、「国際小児がん分類(International Classification of Childhood Cancer)」を用いた解析が2015年分まで実施されていたが、今回はAYA世代にも焦点を当てて解析を行った。これまで、AYA世代は20歳を区切りとして分類していたが、今回初めて0~14歳を小児、15~39歳をAYA世代として区別して、都道府県別、施設別に集計。なお、この世代のがんは数が少ないため、直近で登録済みの2016年と2017年の2年分を合算しての公表となっている。
集計の結果、2016年、2017年の2年間に、自施設で初回治療を開始している小児がんは4,534例(2016年2,136例、2017年2,398例)、AYA世代のがんは5万8,837例(2016年2万9,544例、2017年2万9,293例)だった。2017年集計では任意参加病院が集計対象に追加されているので、2016年と2017年の集計を単純に比較することはできないとしている。このうち卵巣境界悪性腫瘍を除く小児がん4,513例、AYA世代のがん5万7,788例を解析。また、これらについてSEER(Surveillance, Epidemiology, and End Results Program)によって提唱された「国際小児がん分類」と「AYAがん分類(AYA Site Recode/WHO 2008 Definition)」 に従って集計した。
20歳以降のがんの症例の約80%が女性、年齢に従って増加
AYA世代のがんは、25歳を過ぎると飛躍的に増加し、30~39歳で発症しているものが40歳未満のがん全体の約70%、AYA世代のがんに限ると約75%を占めていた。また、20歳以降のがんの症例の約80%が女性で、年齢に従って増加していくことがわかった。AYA世代では、「甲状腺癌、その他の頭頸部癌、気管・気管支・肺の癌、乳癌、泌尿生殖器癌、消化管癌、その他及び部位不明の癌」に該当する「癌腫」と、SEERの「AYAがん分類」には該当する分類がない「変換不能例」が約80%を占めていた。「変換不能例」のうち上皮内がん等について「局在」と「組織型」をもとに再分類を行った結果、変換不能例の97%が再分類後に「癌腫」に該当し、「癌腫」のうち子宮頸部上皮内がんが最多で、次に乳房上皮内がんの順だった。したがって、25歳以降のがんの急激な増加は、女性における子宮頸がんと乳がんの増加によるものと考えられるという。AYA世代のがんは、25歳までとそれ以降で、病気の種類が大きく異なっているため、AYA世代のがん対策を考える際には、このような性別、年齢によるがんの種類の違いも考慮するべきとしている。
AYA世代のがんには症例数が多く成人の患者分布に近いものがある一方、小児がんは症例数が少ないうえに種類も希少な種類のがんが多く、診療の集約化が必要との指摘もなされている。小児がん拠点病院を除く、地域がん診療病院含むがん診療連携拠点病院などの約49%および各都道府県から推薦されて院内がん登録全国集計に参加している病院(以降、都道府県推薦病院)の約84%では、小児がんの初回治療実績がなかった。また、がん診療連携拠点病院等の約25%、都道府県推薦病院の約15%では、調査対象の2年間に1~3例の小児がん患者の初回治療を実施していた。2年間で小児がん1~3例の初回治療を実施した施設数は146施設、初回治療を受けた症例数は202症例だった。初回治療が行われた疾患では、脳腫瘍が約40%と最多で、次いで胚細胞腫瘍が多かった。
国立がん研究センターと国立成育医療研究センターは、厚生労働省より小児がん中央機関に指定されている。協働で集計する体制は今回初めて構築されたものであり、今回はその最初の報告となる。
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・国立がん研究センター プレスリリース