岡山大学病院は、9月から「睡眠薬の整理に関する専門外来」(通称:睡眠薬ポリファーマシー外来)を開設した。地域の医療機関から紹介を受けて週1回、複数のベンゾジアゼピン系薬剤を長期内服している患者を外来で診察する。医師、薬剤師、看護師らで構成される精神科リエゾンチームがカンファレンスを実施して最適な薬物療法を話し合い、薬の減量や中止、他剤への変更などを患者やかかりつけ医師に提案する。地域全体の睡眠薬の困りごとの解決を、基幹病院の専門家が支援する体制を構築した。
ベンゾジアゼピン系薬剤の多剤服用や長期服用による副作用が社会的な問題になる中、地域の医師からポリファーマシーの解消に取り組もうとしても、薬剤の種類や減量の方法について判断に困るといった声を受け、開設に至った。
対象患者は、かかりつけの精神科を持たず、不眠などのためにベンゾジアゼピン系薬剤を3種類以上長期内服している患者。
かかりつけ医が患者に同外来の意義を説明し同意を取得した上で、同院に紹介する。
同院では、毎週木曜日の専門外来で紹介を受けた患者を診察する。そこで把握した情報をもとに、精神科専門医、精神科専門薬剤師、認知症認定看護師、公認心理師らで構成される精神科リエゾンチームがカンファレンスを実施して最適な薬物療法を話し合い、薬の減量や中止、他剤への変更など、複数の具体的な対応案を患者やかかりつけ医に提案する。
また、患者の個別性を考慮した適切な睡眠衛生指導も行っている。
同院薬剤部で精神科リエゾンチームに所属する江角悟氏は、「睡眠薬の適正化や非専門医の睡眠薬に関する困りごとを解決するのが狙い。睡眠薬が複数、ポリファーマシー状態になっている患者が地域には少なからず存在する。精神科を受診してもらえれば改善につながるが、そうなっていないため、かかりつけの精神科を持たない患者と医師を対象に専門外来を立ち上げることになった」と説明する。
カンファレンスでの薬剤師の役割については、「ポリファーマシーの状態になっている人は、睡眠薬以外の薬を複数服用していることが多い。薬のジェネラリストとして、これら疾患の治療薬と、睡眠薬や精神科の薬剤の相互作用や薬物動態への影響などにも意識を向けたい。将来的には、薬剤師も患者指導に関わることができれば理想的だと思う」と話している。