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呼吸器感染の粘膜免疫、カスパーゼ-1非依存の新メカニズムを発見—金沢大

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2019年10月21日 AM11:15

呼吸器感染防御はインフラマソーム<caspase-1経路が知られていた

金沢大学は10月17日、呼吸器系におけるインフラマソームに依存しない粘膜免疫の恒常性維持に関する新しいメカニズムを発見したと発表した。この研究は、同大がん進展制御研究所/新学術創成研究機構の土屋晃介助教らの研究グループによるもの。研究成果は、国際学術誌「Mucosal Immunology」オンライン版に掲載されている。


画像はリリースより

呼吸器系では、肺炎球菌やインフルエンザなどの微生物感染が疾患の原因となるため、その粘膜免疫が正常に機能することが非常に重要だ。これまで自然免疫機構の一種であるタンパク質複合体「」が、caspase-1と呼ばれるタンパク分解酵素を活性化させることで炎症を引き起こし、感染防御を担っていることが知られていた。

インフラマソーム構成成分ASCとNLRP3を介しcaspase-1を介さない新経路を発見

今回研究グループは、野生型マウス(WT)、caspase-1欠損マウス(Casp1/11-/-)、NLRP3欠損マウス(-/-)、ASC欠損マウス(Pycard-/-)に肺炎球菌を経鼻感染させ、48時間後に肺内の菌数をコロニー法で測定。野生型マウスとの比較において、NLRP3欠損マウスおよびASC欠損マウスでは有意な菌数の上昇が認められたが、caspase-1欠損マウスでは認められなかった。この結果から、肺炎球菌性肺炎への感染抵抗性にNLRP3とASCが必要である一方、caspase-1は必要ではないことが示唆された。また、NLRP3とASCはインフラマソーム形成を経てcaspase-1を活性化させることで炎症を誘導すると知られてきたが、先の実験で得られた結果は、NLRP3とASCが未知のcaspase-1非依存的なメカニズムを介して宿主防御に関わり得ることを示唆しているという。

さらに、遺伝子発現プロファイルの結果から、肺炎球菌感染の際、気道におけるTFF2やインテレクチン-1のような粘膜防御因子の発現が、ASCとNLRP3によってcaspase-1非依存的に維持されることがわかった。また、詳細な解析から、ASCとNLRP3は2型サイトカインによるSTAT6の活性化を促進することにより、粘膜防御因子の発現を正に制御する転写因子SPDEFの発現を維持することが明らかになった。すなわち、ASCとNLRP3によるcaspase-1活性化以外の新しい宿主防御メカニズムが同定された。

今回の研究成果により、肺炎球菌に対する防御にcaspase-1の活性化は必ずしも必要ではなく、インフラマソーム構成タンパク質であるASCとNLRP3が重要な役割を果たしていることが明らかにされた。また、遺伝子発現プロファイルによる解析の結果、その作用機序としてASCとNLRP3がcaspase-1とは無関係に粘膜免疫の恒常性維持に働くことが判明した。

これにより、呼吸器の粘膜免疫の恒常性維持のための新しいメカニズムが確認されたこととなる。今後、気道における感染や炎症の制御につながることが期待される。

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