抗がん剤や放射線療法に強い治療抵抗性を有する神経膠芽腫
北海道大学は10月7日、薬剤耐性神経膠芽腫幹細胞に有効な化合物10580を同定したと発表した。この研究は、同大遺伝子病制御研究所の近藤亨教授、同大学院医学研究院脳神経外科教室、富士フイルム株式会社、産業技術総合研究所らの研究グループによるもの。研究成果は「Neuro-Oncology」に掲載されている。
画像はリリースより
神経膠芽腫は、悪性度の高い神経膠腫(グリオーマ)で、標準治療薬のテモゾロミド(TMZ)などの抗がん剤や放射線療法に強い治療抵抗性を有し、高頻度で再発することから新規治療法の開発が求められている。神経膠芽腫幹細胞は、抗がん剤および放射線療法に抵抗性を有する細胞であり、再発の原因細胞と考えられている。
正常細胞に低毒性、マウスに懸念される副作用を示さず
今回の研究では、テモゾロミドに抵抗性を示す神経膠芽腫幹細胞を用いて、細胞増殖抑制、細胞死誘導を基盤とした富士フイルム所有の化合物ライブラリーのスクリーニングを行った。候補化合物の標的因子探索はリガンドフィッシング法を用い、候補化合物の薬効は、細胞傷害活性、各種細胞マーカー因子発現、腫瘍抑制活性を指標に検討した。
その結果、化合物ライブラリースクリーニングにより、TMZ耐性神経膠芽腫幹細胞に細胞増殖抑制、細胞死、幹細胞性欠失を誘導する化合物10580を同定した。リガンドフィッシング法により、10580の標的因子が、ジヒドロオロト酸デヒドロゲナーゼ(DHODH)であることを決定した。これはピリミジンの新規合成経路の化学反応を触媒する酸化還元酵素で、ミトコンドリアの内膜に存在する。さらに、TMZ耐性神経膠芽腫幹細胞を移植した胆がんマウスを用いて、10580が強い抗腫瘍効果を発揮することを確認した。10580はさまざまな正常細胞に低毒性であり、投与したマウス個体に懸念される副作用を示さなかったという。
「10580とその合成展開化合物が神経膠芽腫などの難治性腫瘍に対する新たな治療薬になることが期待される」と、研究グループは述べている。
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