厚生労働省は4日、革新的医薬品の開発に必要な医師主導治験などで中心的役割を担う臨床研究中核病院の要件見直し案を、厚生科学審議会臨床研究部会に示した。中核病院全体の水準を引き上げるため、求める研究実績の件数を増やした一方で、臨床研究に携わる薬剤師数を現在の半数である5人以上とすることなどが盛り込まれていることから、委員からは研究実績に関する基準のハードルの高さを指摘する声が相次いだ。厚労省は、委員の意見を反映した取りまとめ案を次回以降の部会で示す予定にしている。
中核病院の要件見直し案は8月の部会でも示されていたが、今回は委員の意見を踏まえ、内容をより具体化したものを議論した。研究実績については、必要な医師主導治験の件数を倍増し、過去3年間で主導的に実施した治験が8件以上もしくは、4件以上かつ実施した臨床研究の実績が40件以上を求めることとした。一方で、主に特定領域の臨床研究を行う病院では、現在の実施件数から変更しない。
人員体制の面では、治験薬や医薬品安全性情報の管理といった職種としての特性を求める業務を想定した要件とし、臨床研究に携わる薬剤師を現在の10人以上から5人以上に減らすとした。
また、臨床研究コーディネーター(CRC)や治験・臨床研究事務局の担当者など、臨床研究の実施を支援する業務について相当の経験と識見を持つ人を現在の12人以上から24人以上に増員する。
新たな見直し案について、佐藤典宏委員(北海道大学病院臨床研究開発センター長)は、研究実績について現場目線から「中核病院でも治験をマネジメントする人がギリギリの状態であることは間違いなく、専門職であることも踏まえて急に増員、育成することは難しい」と指摘。
渡部歌織委員(東京大学医学部附属病院臨床研究支援センター主任)も「主導的に実施した医師主導治験が現在の1件以上から4件以上と、4倍になっていることは、なかなかハードルが高い」と同調した。
人員体制に関しては、川上純一委員(日本病院薬剤師会副会長)が「薬剤師、看護師などのチーム体制について承認要件をかなり無理してクリアしている病院もあるので、現実的な対応だ」と評価する一方で、「人員を減らすことで、薬学的専門性をどう生かしているのかなど、業務の中身を見ていくことが大事」と指摘した。