パーキンソン病患者157人の離床後の身体活動量・夜間の睡眠の質を測定
奈良県立医科大学は10月4日、パーキンソン病患者で重要な運動症状のひとつである早朝に体の動きが悪くなる症状(早朝アキネジア)が睡眠の質と関連することを明らかにしたと発表した。この研究は、同大学脳神経内科学講座の形岡博史准教授および疫学・予防医学講座の大林賢史准教授らの研究グループによるもの。研究結果は、米国科学誌「SLEEP」電子版に掲載された。
朝に目覚め夜に眠るように、生物は細胞レベルで遺伝子発現やタンパク質合成を約1日の周期で繰り返し行っている。この体内時計のリズムは、脳の視床下部で制御されており、近年の研究から、体内時計の乱れは睡眠障害やうつ病をはじめ、多くの疾患発症に関連していることがわかってきた。パーキンソン病では、体内時計の乱れが顕著であるという報告がされているが、不明な点が多いのが現状だ。
同大学脳神経内科学講座と同疫学・予防医学講座では、パーキンソン病の睡眠や体内時計に関する共同研究(PHASEスタディ)を行っており、現在202名のパーキンソン病患者からの協力を得て測定したデータを分析している。今回研究グループは、パーキンソン病患者157人を対象に、腕時計型活動量計(アクチグラフ)を用いて離床後の身体活動量と夜間の睡眠の質を測定した。
睡眠効率の1標準偏差増加は5.7分の低活動時間の減少と関連
研究の結果、全患者の離床後2時間の低活動時間(100カウント/分未満)の中央値は56分だった。睡眠の質の指標である睡眠効率の増加は、この低活動時間の減少と有意に関連していた。睡眠効率の1標準偏差増加は、5.7分の低活動時間の減少と関連しており、低活動時間が約10%減少すると推計されるという。
一般的に、トイレ、洗面、朝食、着替えなどの日常行為は、離床後2時間の間に行われるため、早朝アキネジアはパーキンソン病患者にとって重要な症状である。今回の研究結果から睡眠の質の改善がパーキンソン病患者の早朝アキネジアを改善し、生活の質を維持する可能性が考えられる。「今後、追跡調査や詳細な分析を行い、近年患者数の増加が著しいパーキンソン病の睡眠と運動症状の関連やメカニズムを明らかにしたい」と、研究グループは述べている。
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