医療従事者の為の最新医療ニュースや様々な情報・ツールを提供する医療総合サイト

QLifePro > 医療ニュース > 医療 > 大腸がんのがん幹細胞制御因子としてマイクロRNA「miR-221」を同定-藤田医科大

大腸がんのがん幹細胞制御因子としてマイクロRNA「miR-221」を同定-藤田医科大

読了時間:約 1分37秒
このエントリーをはてなブックマークに追加
2019年10月08日 AM11:00

、再発、転移などに重要な働きを示すがん幹細胞

藤田医科大学は10月4日、 miR-221がヒト大腸がんの新規がん幹細胞制御因子であることを解明したと発表した。同研究は、同大学の下野洋平教授、米国コロンビア大学の向山順子博士とPiero Dalerba博士、神戸大学の鈴木聡教授、南博信教授、掛地吉弘教授、九州大学の三森功士教授の研究グループによるもの。研究成果は、国際学術誌「Cancer Research」オンライン版に掲載された。

がん幹細胞は、幹細胞のような能力をもつことで、条件が整えばがん組織全体を再生できる特殊ながん細胞だ。そのため、がん幹細胞を抑えることでがんの治療効果が高まることが期待されている。研究グループは先行研究により、乳がん幹細胞の機能がマイクロRNAにより制御されていることを同定していた。がん幹細胞は、大腸がんでもがんの発生、治療抵抗性、再発、転移などに重要な働きをすることが示されているが、ヒト大腸がん幹細胞の制御にどのようなマイクロRNAが関わっているのかは明らかになっていなかった。

乳がんのがん幹細胞でもmiR-221の発現上昇がみられる

今回、研究グループは、大腸がんの手術検体から分離したがん幹細胞を解析し、miR-221が大腸がんのがん幹細胞制御因子であることを解明した。まず、大腸がんの手術検体よりがん幹細胞を分離し、754種類のマイクロRNAの発現をスクリーニングし、特にmiR-221ががん幹細胞でのみ非常に高発現していることが明らかになったという。また、がんゲノムデータベースの解析よりmiR-221が高発現している大腸がん患者は、低発現の患者に比べて予後不良であることが明らかになった。がん幹細胞の基本的な機能(増殖・分化し腫瘍形成をするなど)は、miR-221発現を抑えることで顕著に抑制されたとしている。


画像はリリースより

次に、研究グループは、miR-221ががん幹細胞遺伝子として働く際には、RNA結合タンパク質QKI-5を標的として抑制することが重要だと見出した。QKI-5の発現を強めると、miR-221を抑制した時と同様にがん幹細胞のもつ基本的な機能は抑制されたという。

研究グループは、乳がんのがん幹細胞でもmiR-221の発現上昇がみられることを見出しており、miR-221は大腸がんと乳がんに共通するがん幹細胞の制御因子だと考えられる。今後は、miR-221を抑制する治療法を見出すことで、大腸がんや乳がんに限らず多くのがん種の治療効果を高められるようになることが期待される、と研究グループ述べている。(QLifePro編集部)

このエントリーをはてなブックマークに追加
 

同じカテゴリーの記事 医療

  • 前立腺がん、治療決定時SDMが患者の治療後「後悔」低減に関連-北大
  • 糖尿病管理に有効な「唾液グリコアルブミン検査法」を確立-東大病院ほか
  • 3年後の牛乳アレルギー耐性獲得率を予測するモデルを開発-成育医療センター
  • 小児急性リンパ性白血病の標準治療確立、臨床試験で最高水準の生存率-東大ほか
  • HPSの人はストレスを感じやすいが、周囲と「協調」して仕事ができると判明-阪大