治療抵抗性、再発、転移などに重要な働きを示すがん幹細胞
藤田医科大学は10月4日、マイクロRNA miR-221がヒト大腸がんの新規がん幹細胞制御因子であることを解明したと発表した。同研究は、同大学の下野洋平教授、米国コロンビア大学の向山順子博士とPiero Dalerba博士、神戸大学の鈴木聡教授、南博信教授、掛地吉弘教授、九州大学の三森功士教授の研究グループによるもの。研究成果は、国際学術誌「Cancer Research」オンライン版に掲載された。
がん幹細胞は、幹細胞のような能力をもつことで、条件が整えばがん組織全体を再生できる特殊ながん細胞だ。そのため、がん幹細胞を抑えることでがんの治療効果が高まることが期待されている。研究グループは先行研究により、乳がん幹細胞の機能がマイクロRNAにより制御されていることを同定していた。がん幹細胞は、大腸がんでもがんの発生、治療抵抗性、再発、転移などに重要な働きをすることが示されているが、ヒト大腸がん幹細胞の制御にどのようなマイクロRNAが関わっているのかは明らかになっていなかった。
乳がんのがん幹細胞でもmiR-221の発現上昇がみられる
今回、研究グループは、大腸がんの手術検体から分離したがん幹細胞を解析し、miR-221が大腸がんのがん幹細胞制御因子であることを解明した。まず、大腸がんの手術検体よりがん幹細胞を分離し、754種類のマイクロRNAの発現をスクリーニングし、特にmiR-221ががん幹細胞でのみ非常に高発現していることが明らかになったという。また、がんゲノムデータベースの解析よりmiR-221が高発現している大腸がん患者は、低発現の患者に比べて予後不良であることが明らかになった。がん幹細胞の基本的な機能(増殖・分化し腫瘍形成をするなど)は、miR-221発現を抑えることで顕著に抑制されたとしている。
画像はリリースより
次に、研究グループは、miR-221ががん幹細胞遺伝子として働く際には、RNA結合タンパク質QKI-5を標的として抑制することが重要だと見出した。QKI-5の発現を強めると、miR-221を抑制した時と同様にがん幹細胞のもつ基本的な機能は抑制されたという。
研究グループは、乳がんのがん幹細胞でもmiR-221の発現上昇がみられることを見出しており、miR-221は大腸がんと乳がんに共通するがん幹細胞の制御因子だと考えられる。今後は、miR-221を抑制する治療法を見出すことで、大腸がんや乳がんに限らず多くのがん種の治療効果を高められるようになることが期待される、と研究グループ述べている。
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・藤田医科大学 プレスリリース