同院では、総合診療科病棟内の一般急性期47床の患者を対象に薬剤師が常駐し、様々な薬学的介入を実施している。2017年6月から19年5月の2年間、同病棟の患者を対象に日本病院薬剤師会に報告したプレアボイド38件の介入内容を解析し、医療経済効果を推算した。
薬学的介入の医療経済効果については、愛媛大学病院薬剤部の報告を参考に、17年度の医薬品副作用被害救済制度支給額を根拠に推算している。また、重大な副作用の発現や重篤化を回避した事例の経済効果は、1件当たり180万円として算出している。
介入により重大な副作用の回避につながった割合をもとに、癌化学療法に関する介入は1件当たり9万4000円、ハイリスク薬に関する介入は1件当たり7万円、その他の薬剤への介入は1件当たり4万7000円として算出した。
プレアボイド報告38件の内訳は、重大な副作用の発現や重篤化回避13件、ハイリスク薬への介入4件、その他の薬剤への介入21件だった。38件の介入内容を解析して、推算した薬学的介入の医療経済効果は、2466万7000円に上ることが分かった。
具体的には、肺炎の治療は終了したものの、肺炎発症前からの喉閉塞感と乾性咳嗽が継続していた患者に対して、薬剤師は持参薬のロキソニンテープによるアスピリン喘息誘発を疑い、COX阻害作用を持たない湿布薬への変更を提案して受諾された結果、これらの症状は改善した。
また、夜間の不眠に対してブロチゾラムとゾルピデムが連日併用され、早朝のふらつきや夜間不穏を認めた患者に対して、薬剤師がベンゾジアゼピン系薬併用による持ち越し効果やせん妄を疑い、クエチアピンへの変更などを提案して受諾された結果、これらの症状は改善した。
その他の薬剤の介入21件の内訳は、薬物相互作用回避6件、腎機能に応じた投与量推奨2件、薬歴の聴取9件、薬剤処方提案4件だった。
薬物相互作用の回避としては、レボフロキサシンと金属イオン含有製剤の併用などによる吸収低下への介入、クロピドグレルとオメプラゾール併用による血中濃度低下への介入などを実施した。
同院薬剤科の山田航輔氏は、「薬剤師は回診やカンファレンスにも積極的に参加しており、医師の考えを把握できているため、様々な提案をしやすい環境にある。前任者が総合診療科病棟で、医師や看護師から信頼を得て業務を構築していたため、引き継いだ業務の効果を可視化したいと考えた」と振り返る。
同様の解析を実施した各施設の報告によると、薬剤師の薬学的介入によって、緩和ケア病棟では1カ月で約300万円、循環器病棟では1年間で約1300万円、整形外科病棟では4年間で約1800万円の医療経済効果があると推算されている。
山田氏は、「今回の解析によって、新たに総合診療科病棟でも薬学的介入に医療経済効果がある可能性を示すことができた」と話している。