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がん光免疫療法、日本人データを含む新たな解析結果を発表-楽天メディカル

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2019年10月02日 AM09:30

RM-1929による光免疫療法の、日本と米国における最新の解析結果を公表

楽天メディカル社は10月1日、スペインのバルセロナで開催されている欧州臨床腫瘍学会()で、RM-1929による光免疫療法の、日本で実施した第1相臨床試験、および米国で実施した第1/2a相臨床試験における新たな解析結果を発表した。

光免疫療法は、抗体によりがん細胞を選択的に標的化し、レーザーによってがん細胞を速やかに壊死させる治療法。がん細胞を正確かつ迅速に壊死させる一方で、正常組織にはわずかな影響しか及ぼさないと考えられている。

RM-1929は、ASP-1929と同一の有効成分から成る薬剤。セツキシマブとIRDye(R)700DX の複合体であるASP-1929は、、食道がん、肺がん、結腸がん、すい臓がんなどさまざまな種類の固形がんに発現するがん抗原である上皮成長因子受容体(EGFR)を標的とする。同剤は、がん細胞と結合後、独占的ライセンスをもつレーザー機器と光ファイバーにより照射された非熱性赤色光により、局所的に活性化される。この治療法は、がん細胞を標的としており、周囲の正常な組織に対しての影響は極めて限定的と考えられる。

反復投与でも、抗薬物抗体の発現が低いことが判明

今回の発表内容はいずれも、局所再発頭頸部癌患者を対象としたRM-1929による光免疫療法の安全性と抗腫瘍効果の評価について述べたもの。

1つ目は「局所再発頭頸部癌患者を対象としたRM-1929による光免疫療法の総合的な安全性、薬物動態()および免疫原性のデータ」について。2019年の米国臨床腫瘍学会 ()で報告された、米国での第2a相臨床試験から得られた臨床的に意義のある結果を踏まえると、今回報告された日本での第1相および米国での第1/2a相臨床試験における安全性プロファイル、PKの評価結果は、現在行われている局所再発頭頸部がん患者を対象としたASP-1929の国際共同第3相臨床試験を後押しする内容だった。主なポイントは以下の通り。

・上記2試験で治療を受けた患者41名のうち、17名に1つ以上の重篤な有害事象(SAE)が発現し、うち5名のSAEは同治療に関連していると考えられた。しかし、大部分が治療部位に起きる局所的なものだった

・上皮成長因子受容体(EGFR)の飽和が達成されることが予測されるRM-1929 640mg/m2のAUC(血中薬物濃度時間曲線下面積)およびT1/2(消失半減期)の結果が得られた。RM-1929(サイクル2-4)の約4週間間隔での反復投与でも、サイクル1の薬物動態と同等で、抗薬物抗体の発現が低いことが示された

光免疫療法の潜在的な免疫活性に関する可能性を示唆

2つ目は「RM-1929による光免疫療法を受けた局所再発頭頸部癌患者のがん細胞内および周辺部の探索的バイオマーカー解析」について。局所再発頭頸部癌患者を対象とした米国での第1/2a相臨床試験で、RM-1929による光免疫療法の免疫バイオマーカーが評価された結果、一部の症例で治療部位における効果の有無に関わらず、治療後に免疫活性の潜在的な兆候が見られたという。主なポイントは以下の通り。

・12名中8名で、RM-1929による光免疫療法は、がん細胞および免疫細胞におけるPD-L1発現の誘導に関連していた

・治療前および治療後の生検の結果、この12名の残存したがん細胞においてEGFRの発現の維持が確認されており、さらなる光免疫療法の治療の可能性の対象となり得ることが示された

・18名の患者のうち15名で、末梢血の免疫表現型検査を実施した結果、治療後の自然免疫および適応免疫の活性化の可能性が示唆された

同社はこれらの結果について、「今回の解析結果により、楽天メディカル社が開発する光免疫療法の安全性とPKデータがさらに明確になり、光免疫療法の潜在的な免疫活性に関する可能性を示した。このことにより、今後、他のがん免疫療法との併用の可能性が開かれる。現在ASP-1929 による国際共同第3相臨床試験が進行中だ。これは新しい治療法を確立するために重要なステップであり、現在治療法が限られた頭頸部がんと闘う患者に対して、新たな治療選択肢の提供につながると信じている」と、述べている。

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