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マラリアによる死因と防御メカニズムを明らかに-群馬大

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2019年09月30日 AM11:00

これまでにマラリア感染防御メカニズムを複数解明

群馬大学は9月26日、マラリアによる死因と防御メカニズムを解明したと発表した。この研究は、同大学大学院医学系研究科生体防御学の今井孝助教らと、、米国Vanderbilt大学らとの国際共同研究グループによるもの。研究成果は、国際学術誌「Frontiers in Immunology」に掲載された。


画像はリリースより

マラリアは一日あたり約2,000人の死亡者を出すとされる、世界最大規模の感染症。原因であるマラリア原虫(Plasmodium属)は複雑な生活環を持っており、「媒介する蚊に感染するステージ」「宿主動物の肝臓に感染するステージ」「赤血球系細胞に感染するステージ(赤内期)」がある。発熱、貧血などの臨床症状を引き起こすのは赤内期。研究グループはマウス赤内期マラリアを長年研究しており、今までに生ワクチンの開発や、赤血球の前駆細胞である赤芽球にマラリア原虫が寄生することを発見している。また、脳マラリアの新しい評価法や、キラーT細胞とマクロファージの連携による赤内期マラリア感染防御メカニズムなどを報告してきた。

マラリアワクチンは、投与することで病原体に対応できるT細胞やB細胞を生み出すことを前提に開発がなされている。赤内期の原虫は赤血球系細胞に感染するが、赤血球はMHCクラスIを持っていないためキラーT細胞は認識することができず、これまで防御への関与は疑問視されていた。一方でヘルパーT細胞の赤内期マラリア感染への関与はより広く受け入れられている。実験で、感染後1か月ほどで自然治癒するマウスマラリア原虫(弱毒株)を、ヘルパーT細胞を除去したマウスに感染させると、除去していないマウスよりも多くの感染赤血球が認められ半数ほどのマウスが死亡する。キラーT細胞除去マウスでも同様の現象が認められたことから、キラーT 細胞もマラリア赤内期感染防御で重要な働きをしていると考えられる。

マラリアの死因は「高い虫血症、重症貧血のみ」なのか?

今回研究グループは、キラーT細胞を除去したマウスに弱毒株マラリア感染すると、免疫を抑える役割をもつタンパク質()が増えており、免疫を活性化する役割をもつタンパク質(IFN-ガンマ)が減少していたことを新たに発見。さらに、弱毒株マラリア感染防御には、細胞死に関与する分子とマクロファージが重要であることも判明した。

マウスのマラリア原虫には、治癒する弱毒株の他に、高い虫血症を引き起こし重症貧血により個体を10日ほどで死に至らせる強毒株が存在する。そこで研究グループは、強毒株感染による死因、あるいはキラーT細胞除去弱毒株感染による死因が、「高い虫血症、重症貧血のみ」なのかについて検討した。

高乳酸血症のみでマラリアによる死因になりうる

マラリア原虫は、血中のグルコースを栄養源として取り込み、残りカスとして乳酸を排出する。そこで研究グループは、弱毒株と強毒株感染マウスの血中乳酸濃度の変化を調べた。感染前のマウス血中乳酸濃度は2~4mmol/L程度だが、強毒株感染群では感染後、血中乳酸濃度が急激に上昇し平均19mmol/L程度に達し、その後全てのマウスが死亡した。強毒株感染の虫血症率は平均80%程度に達していた。一方で弱毒株感染対照群では最大血中乳酸濃度が平均9mmol/L程度で、ピークの虫血症率は平均35%程度だった。キラーT細胞除去弱毒株感染群では最大血中乳酸濃度は平均17.5 mmol/Lでピークの虫血症率は平均60%程度でした。このことから虫血症の重症度と血中乳酸濃度に関係性が認められた。さらにキラーT 細胞は高虫血症を抑えるとともに高乳酸血症も抑えていることが明らかとなった。

次に乳酸が死因になり得るかを調べるため、弱毒株感染初期の通常では死亡しない状況下において乳酸10mgを感染4日と6日後に強制投与する実験を行った。対照群と乳酸投与群はいずれも1.5%ほどの低い虫血症率(6日後)だったが、乳酸投与群は感染8日後に全てが死亡した。今回の成果は、赤内期マラリア感染防御を解明し、高乳酸血症のみでマラリアによる死因になりうることを初めて示したもの。研究グループは今後、「強毒株マラリア感染でなぜ高乳酸血症が引き起こされるのか、高乳酸血症により体内でどのような変化が起きているのかを研究したい」と、述べている。

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