■国際化への挑戦も提言
ビジョンは、ビッグデータで社会課題を解決する「ソサエティ5.0」が完成する30年を焦点に、GE薬業界が迎える時代と11年後に対応していくべき変化を考え、対策を進める必要がある重要な5項目を盛り込んだ。
従来の産業ビジョンでも、海外展開や地域医療、バイオ後続品など期待される産業像が示されていたが、薬価制度の抜本改革や長期収載品の撤退が可能になるG1、G2ルール導入など環境変化を背景に、より将来の方向性に近い形で見直すことになった。
新ビジョンでは、GE薬メーカーが医療だけではなく、健康や介護に貢献していく方向性を示した。国内GE薬メーカーの強みとして製剤技術を挙げ、ICチップやセンサーを搭載した「溶けない錠剤やカプセル剤」などで侵襲性の低い検査を導き、未病ケアや予防に応用していく可能性を提示。また、3Dプリンティング技術を個別化医療に活用し、新市場を開拓するなどビジネスモデルの変革を促している。
GE薬産業の競争力強化に向けては、グローバル化への挑戦を提言。日本市場で培ってきた良質な医薬品を提供し、今後拡大が予想されるアジア・アフリカなど将来の市場を開拓していく将来像を示した。
国内での地域医療に着目し、地域包括ケアシステムの実現でGE薬メーカーが取り組むべき活動も明記した。地域での医薬品使用指針となる地域フォーミュラリーでの安定供給体制や他社との共同生産体制構築、在宅医療の浸透に対応する必要性などにも言及した。
ソサエティ5.0の実現に向け、GE薬メーカーがICT技術を活用した医療に関与することや、レセプトデータや電子カルテデータなどリアルワールドデータを活用した医療情報の提供を例示した。さらに、企業の社会的責任として持続可能目標としてSDGsの達成に寄与することも盛り込んだ。
GE薬メーカーの事業がさらに多様化し、未病ケアや予防市場への参入だけではなく、既存薬の別適応症を探索するドラッグリポジショニングや医薬品製造での連続生産システムなどを行う研究開発型企業も登場すると予測した。
GE薬協がまとめた今年4~6月のGE薬数量シェアは75.8%であり、全ての医療用医薬品を分母にするとおよそ半数を占めるという。
政策実務委員会の田中俊幸委員長は同日の記者会見で、80%達成の目標時期となる来年9月まで残り1年での発表について、「ポスト80%がGE薬メーカーにとって明るい未来であることを示したかった」と説明した。
ただ、足元では大きな課題に直面しており、「ビジョンに基づき、具体的な活動を行った企業だけが将来生き残ることができる」とし、地域フォミューラリーの普及などで業界再編が起こる可能性にも言及した。産業ビジョンの内容は今後も検証し、必要に応じて柔軟に見直していく考えだ。