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可溶性免疫チェックポイント分子全自動測定法を構築-シスメックスと京大

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2019年09月27日 AM11:45

可溶性免疫チェックポイント分子sPD-1、sPD-L1、sCTLA-4

シスメックス株式会社は9月25日、同社と京都大学高等研究院の本庶佑特別教授が、2013年から共同で研究開発を行ってきた、(sPD-1、sPD-L1、sCTLA-4)の全自動測定法を構築したことを発表した。

免疫チェックポイント分子とは、体内の免疫恒常性を維持するために、免疫機能を活性化、抑制する働きを持つ複数の分子タンパク質の総称。免疫チェックポイント分子は、自己免疫疾患や、がんの免疫逃避に関わっていることが知られている。近年、新たながん治療法として、がん患者に免疫チェックポイント分子に結合する抗体を投与し、免疫抑制機能を阻害することで免疫を再活性化させる「」が確立された。

2018年には、免疫チェックポイント分子によるがん治療を考案した京都大学高等研究院の本庶佑特別教授、テキサス州立大学MDアンダーソンがんセンターのJames P. Allison博士がノーベル医学・生理学賞を受賞した。

がん免疫療法は、従来の抗がん剤による治療効果が得られにくい患者に対しても高い治療効果を示す一方、投薬効果が期待できる患者を事前に選択することが難しいことや、免疫に関わるさまざまな副作用が生じる可能性があることから、治療効果や副作用の有無を予測するバイオマーカーの探索が進められている。

2019年9月より同測定法を用いた研究用受託サービスを開始

本庶特別教授は、通常では細胞膜表面に存在する免疫チェックポイント分子(PD-1、PD-L1、CTLA-4)の一部が、可溶性免疫チェックポイント分子(sPD-1、sPD-L1、sCTLA-4)として血液中にも存在することに着目。多くの研究者によって、がんや免疫疾患と血液中に存在する可溶性免疫チェックポイント分子との関連について検証が進められているが、血中可溶性免疫チェックポイント分子の量が少ないことから、正確に測定することが困難だった。そこで、本庶特別教授とシスメックスは、血中可溶性免疫チェックポイント分子の測定が可能な高感度免疫測定法を構築することで、患者の負担が少なく、簡便に免疫状態の把握が可能になると考え、2013年より共同研究を進めてきた。

今回両者は「研究用全自動高感度免疫測定装置 HI-1000」を用いた可溶性免疫チェックポイント分子の全自動測定法を構築。この測定法は、測定原理に化学発光酵素免疫測定法(CLEIA:Chemiluminescence Enzyme Immunoassay)を活用し、測定手技を全自動化することにより、可溶性免疫チェックポイント分子の測定を17分(100テスト/時間)で可能にし、高い感度と再現性を実現した。なお、シスメックスは、2019年9月より同測定法を用いた研究用受託サービスを開始する。

この測定法は、がん免疫療法やさまざまな自己免疫疾患の新たな診断法となり、個別化医療の実現につながる可能性があることから、両者はその実用化に向けて研究開発を促進し、医療の発展に貢献していくとしている。

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