サルコペニアや骨格筋に関連の疾患治療に有効の可能性
千葉大学は9月20日、加齢に伴い全身の筋力が低下するサルコペニアや、骨格筋に関連する疾患の治療に有効とみられるタンパク質「R3hdm」を同定したと発表した。この研究は、同大大学院医学研究院の横手幸太郎教授らの研究グループが、国際医療福祉大学医学部の竹本稔主任教授、首都大学東京人間健康科学研究科の藤井宣晴教授らとの共同で行ったもの。研究成果は「EMBO reports」に掲載されている。
加齢に伴って骨格筋が萎縮することで筋肉量が低下するサルコペニアは、高齢者の日常生活動作や生活の質を著しく低下させる。超高齢化社会を迎えた日本では特に治療法の確立が大きな課題となっている。加齢に伴う骨格筋の再生能力の低下がサルコペニアの発生に関与しているが、詳細な原因やメカニズムは十分に明らかにされていない。
骨格筋の分化/再生時に筋衛星細胞から「R3hdml」が一時的に分泌
画像はリリースより
骨格筋の再生に大きく関わっているのは、筋繊維の間に存在する筋衛星細胞の増殖と分化と考えられている。研究グループはモデルマウスを用いた実験で筋衛星細胞を詳細に調査。マウスの骨格筋が分化したり再生したりする時に、筋衛星細胞から「R3hdml」というタンパク質が一時的に分泌されることを突き止めた。この過程で、R3hdmlの発現には、骨格筋分化のマスター制御因子であるMyoDが制御機能を持つことがわかったという。
また、R3hdmlを欠損させたマウスでは、筋衛星細胞の増殖能が低下し骨格筋の構造に異常をきたすことや、骨格筋の再生力が低下することを明らかにした。さらには、R3hdmlを与えることにより、R3hdml欠損マウスの筋再生能力の低下を回復させることができた。
「今後、このR3hdmlの筋衛星細胞の増殖や分化を促すメカニズムを詳細に解明することで、サルコペニアの新しい治療法の開発につながることが期待される」と、研究グループは述べている。
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