■薬機法改正内容を先取り
同事業は、厚生労働省のモデル事業として採択されたもので、10~12月の2カ月間実施する。期間中に収集した症例や各地の実践事例を解析し、事業報告書をまとめる。
大阪府薬会長の藤垣哲彦氏は、「今回の事業は継続審議中の薬機法改正を見据えた取り組みになる。法改正に向けたエビデンス作りの一助になればと思っている」と意気込みを語る。
継続的な患者フォローアップのモデル事業に取り組むのは、住吉区、池田市、高槻市、寝屋川市、八尾市、松原市、泉佐野市の7地域薬剤師会。地域ごとに対象疾患や対象薬剤を限定し、実際にフォローアップした事例を会員から集める。
各事例について、▽疾患名や薬剤名▽新規処方、継続処方▽電話やメール、アプリなど連絡手段▽連絡頻度▽有害事象や服薬改善など体調の変化▽服薬状況▽結果の記録▽患者の背景に応じて工夫した点▽患者からの質問・相談内容――の9項目の情報を収集。
これらを解析して、フォローアップを行う時に適した連絡手段や頻度、役立った体調変化や服薬状況の把握方法などを疾患や薬剤ごとに明らかにする。
大阪府薬常務理事の堀越博一氏は「新たに薬剤の投与が始まったり、慢性疾患の患者の薬が切り替わった時に何らかの形でフォローアップすることが考えられる。電話が毎日かかってくることを患者が望んでいるとは思わないが、実際の事例を解析して最適な方法を提案したい」と語る。
一方、専門性の高い薬物療法に対応できる薬局のあり方としては、大阪国際がんセンターの協力を得て、外来癌患者の情報を病院と薬局間で共有する連携シートやトレーシングレポートの作成に取り組む。乳癌と大腸癌を対象に、適切な様式のシートやレポートによる情報共有について、同院の薬剤師と薬局薬剤師がグループで話し合い、様式を策定する。淀川キリスト教病院と周辺薬局でも同様の検討を進める。
堀越氏は「専門的な病院が発行する院外処方箋の多くは地域の薬局が応需している。地域薬局でも対応できる能力を身に付ける必要がある」と話す。
薬局薬剤師と多職種間のより良い情報連携のあり方も検証する。患者の退院時などに薬局薬剤師が、効果的な職種、手段、情報提供について会員から集めた事例を解析して明らかにする。残薬解消、多剤併用(ポリファーマシー)改善、副作用の防止などにつながる情報提供のあり方を探りたいという。
薬局間の協力体制のあり方についても検証する。実際に協力した事例を会員から収集。患者情報共有や医薬品分譲、在宅サポートなどの協力内容、時間帯・曜日、情報共有方法、協力理由などを報告してもらい、事例をもとに具体的な協力方法を提案する計画だ。
患者の入退院時に病院と薬局間で必要な情報を共有するシートの作成や運用を各地域で実践してもらう。課題を洗い出した上で、各地域の状況に応じて情報共有シートを改良し、最適な連携手順を構築してもらいたい考えである。各地の取り組みをモデルとして示し、他地域での連携推進につなげる。