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便秘薬リナクロチド、慢性腎臓病の進行抑制および心血管疾患予防の可能性-東北大ら

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2019年09月20日 AM11:30

血中トリメチルアミン-N-オキシド低下は心腎症候群治療のターゲットに

東北大学は9月18日、便秘症の治療薬として使用される薬剤リナクロチドが慢性腎臓病の進行を抑え、心血管疾患のリスクを低下させる効果があることを、慢性腎臓病動物モデルにおいて明らかにしたと発表した。この研究は、同大学大学院医学系研究科および大学院医工学研究科の阿部高明教授、原(南都)文香研究員(現・農業・食品産業技術総合研究機構研究員)らが、同大学薬学研究科の富岡佳久教授、慶應義塾大学先端生命科学研究所の福田真嗣特任教授らと共同で行ったもの。研究成果は、欧州腎臓協会学術誌「Nephrology Dialysis Transplantation」電子版に掲載されている。


画像はリリースより

近年、腸内細菌叢由来の代謝物質であるトリメチルアミン-N-オキシドの血中濃度上昇が心血管疾患の主要なリスク因子であることが臨床研究で示され、加えて、慢性腎臓病患者の死亡率を上昇させることも明らかとなっている。そのため、血中トリメチルアミン-N-オキシド濃度を低下させることは心腎症候群の治療と予防の新しいターゲットであると考えられる。

これまでに阿部教授らの研究グループは、腸内環境および腸内細菌叢由来の代謝物質に注目して腎臓病の新たな治療方法の研究開発を続けてきた。今回研究グループは、腸内環境を変化させる薬剤として便秘症の治療薬であるリナクロチドを用い、腎臓病に対する治療効果を検討した。

腸内環境改善による腸-心臓-腎臓の連関を介した新たな治療戦略へ

腎不全マウスにリナクロチドを投与すると、腎臓の機能と組織の障害が改善し、腎臓病の進行が抑制された。またCE-TOFMSという装置を用い、腎不全時に血液中に蓄積する代謝物質を測定した結果、リナクロチドを投与したマウスでは心血管疾患のリスク因子であるトリメチルアミン-N-オキシドの血中濃度が減少することが明らかになった。そこで、心筋の繊維化とそのバイオマーカーについてリナクロチドの効果を評価したところ、腎不全マウスで見られた心筋の繊維化の進行および血中バイオマーカー(Galectin-33 および ST2)値の上昇が、リナクロチド投与によって抑えられた。さらに、次世代シークエンサーを用いた遺伝子レベルでの腸内細菌叢解析を行ったところ、リナクロチド投与により特定の腸内細菌群(クロストリジウム目)の割合が減少しており、この変化がトリメチルアミン-N-オキシドの減少に関連していることが明らかになった。

トリメチルアミン-N-オキシドの元となるコリンなどの栄養素を多量摂取すると、トリメチルアミン-N-オキシド血中濃度が増加し、動脈硬化や腎臓の線維化が起こることが知られている。そこで、コリンを多く含む餌で飼育し血中トリメチルアミン-N-オキシドを増加させたマウスを用いてリナクロチドの効果を検証したところ、リナクロチドの投与によりトリメチルアミン-N-オキシドおよび線維化バイオマーカーの血中濃度の減少が認められたという。

「今回の成果から腸内環境の改善によりトリメチルアミン-N-オキシドを低減させることは腸-心臓-腎臓連関を介した心腎症候群の予防と治療の一助となり、リナクロチドはその候補薬となる可能性が示された」と、研究グループは述べている。

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