日本人特有のtagSNPと疾患関連SNP総計66万個搭載
東北メディカル・メガバンク機構(ToMMo)は9月17日、日本人集団特有の疾患関連SNPを搭載し、健康診断での利用や医療への応用を想定した、これまでにない疾患志向のSNPアレイ「ジャポニカアレイ(R)NEO」を開発、サーモフィッシャーサイエンティフィック ジャパングループより販売開始すると発表した。
画像はリリースより
ToMMoは、世界で初めて特定の民族集団の全ゲノム解析を1,000人以上の規模で行い、成果を全ゲノムリファレンスパネルとして発表している。同パネルを活用し、日本人に最適化したSNPを選択してマイクロアレイを設計することで、高性能なゲノム解析を低価格で実現しようと、2014年にジャポニカアレイ(R)を、2017年にジャポニカアレイv2を開発してきた。今回、これまでのジャポニカアレイの設計方法を根底から刷新し、世界の標準となりつつある連鎖不平衡統計量(r2)を用いてtagSNPを選択、これまでで最大の3,552人の日本人の全ゲノム配列データを含む3.5KJPNv2をもとに設計を行った。
常染色体およびX染色体上のtagSNPは、日本人の全ゲノムレベルでの遺伝子型インピュテーションに最適化した約65万個を選抜し、搭載。一方、疾患関連SNPは、専門家による文献調査等により日本人における研究成果の報告があるSNP、さらに、国外のデータベース(GWAS Catalog)や市販のSNPアレイ(UK Biobank Axiom Array)に搭載された疾患関連SNPのうち、3.5KJPNv2を参照して日本人で多型を示すSNPを選択し、合計約2万8,000個を搭載した。重複するものを含めtagSNPと疾患関連SNPで総計約66万個のSNPが搭載されている。
安価、高速、高精度にSNP情報、擬似全ゲノム配列の取得が可能に
286人の日本人由来の検体を用いたジェノタイピングにより、ジャポニカアレイNEOの性能検証を行った結果、搭載SNPのうち、286人のデータセットで99.5%が多型を示し、効率よく日本人のゲノム解析が可能な設計となっていることを確認。また、3.5KJPNv2を用いた遺伝子型インピュテーションでは、ほぼ全てのマイナーアレル頻度の区分において、推定されたSNPと入力されたSNPの一致度を示す決定係数の平均値が0.9以上と、十分な予測精度を示した。さらに、同遺伝子型インピュテーション後に得られた一定精度(INFO>0.8)以上のSNP数は、総計約1,300万個となり、日本人の疑似全ゲノム解析に有用な設計となっていることが明らかとなった。
同アレイは、多因子疾患を中心に、幅広い疾患を対象として日本人のSNP情報を収集し、疾患との関連を検証することができるような設計とした。具体的には、認知症、抑うつや、自閉スペクトラム症等を含む精神神経系疾患(約5,500個)、高血圧、心疾患や、脳血管疾患等の循環器疾患(約1,100個)、気管支喘息や慢性閉塞性肺疾患等の呼吸器系疾患(約2,000個)、糖尿病や脂質異常症等の代謝系疾患(約2,900個)、悪性新生物(約900個)、遺伝性疾患(約900個)等。特定の疾患を対象としたSNP以外にも、種々の免疫制御に関わるHLA(ヒト白血球抗原)およびKIR(キラー免疫グロブリン受容体)(計約7,200個)、ファーマコゲノミクス(約1,800個)、その他形質や遺伝子発現等に関連するSNPも搭載している。
今回ジャポニカアレイNEOが発売されたことにより、全ゲノム解析の価格面でのハードルが下がり、これまで全ゲノム解析をしていなかったために明らかにできなかった、より広いゲノム領域と疾患との関連性などが明らかになる可能性がある。また、大勢の人数のゲノム解析が低コストで実施可能となるため、これまでゲノム解析の対象ではなかった健康診断などの新たな領域への拡大も期待される。
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