転移しやすく既存の抗がん剤が効きづらいトリプルネガティブ乳がん
東京薬科大学は9月11日、高い浸潤・転移能をもつ悪性の乳がん細胞において、浸潤能に関わる酵素の輸送機構とそれに関わるタンパク質を発見した発表した。この研究は、同大学生命科学部分子細胞生物学研究室の井上弘樹講師の研究グループが、佐々木研究所の山口英樹博士と共同で行ったもの。この成果は、米国科学誌「Journal of Cell Biology」に掲載されている。
画像はリリースより
がんによる死因の90%は、がん細胞の浸潤・転移が関係している。乳がんにおいても、転移の無い場合の5年生存率は99%だが、転移すると27%に低下する。特に、悪性度の高いトリプルネガティブタイプの乳がんは転移しやすく、既存の抗がん剤が効きづらく、難治性であることから、その診断および治療の基礎となる遺伝子、タンパク質レベルでの機構の解明が求められている。
がん細胞浸潤で中心的役割を果たす酵素MT1-MMPがタンパク質Bet1を利用
がん細胞の浸潤で中心的役割を果たすのは、細胞膜に存在する酵素「MT1-MMP」。コラーゲンを分解して浸潤を助けるが、細胞の中で作られたMT1-MMPの輸送される仕組みはよくわかっていなかった。
今回研究グループは、MT1-MMPが細胞内輸送に関わるタンパク質Bet1を利用して効率的に細胞膜まで輸送されていることを発見。通常Bet1は、細胞膜への輸送に関わっていないが、MT1-MMPと相互作用することで、細胞膜への輸送を仲介するようになる。つまり、MT1-MMPはBet1の機能を乗っ取り、自らの輸送に役立てているのだ。「この研究をさらに進めることで、がん転移の診断・治療法の開発につながることが期待される」、と研究グループは述べている。
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