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大腸がんBRAF遺伝子変異を3タイプに分類、うち1タイプで抗EGFR抗体が有効-国がん

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2019年09月18日 AM11:45

新たに見つかったBRAF遺伝子変異に抗EGFR抗体は有効か?

国立がん研究センターは9月12日、BRAF遺伝子変異を有する大腸がんに対する、新たな個別化治療を提唱することに成功したと発表した。この研究は、同センター東病院消化管内科の吉野孝之科長と愛知県がんセンターがん標的治療トランスレーショナルリサーチ分野の衣斐寛倫分野長の研究グループが、米国ハーバード大学、メモリアルスローンケタリングがんセンターとの国際共同研究で行ったもの。研究成果は、米国がん学会が発行する「Clinical Cancer Research」に掲載された。


画像はリリースより

進行・再発の大腸がんに対しては、主に抗がん薬による薬物療法が行われるが、抗EGFR抗体薬は細胞表面にあるEGFRをブロックし、がん細胞の増殖を抑制する。一方で、EGFRを抑制しても、別のタンパク質に異常があると効果がなくなることもわかっており、治療前にRAS・BRAF遺伝子の異常の有無を検査し、異常がある場合には抗EGFR抗体を使用しないことになっていた。最近、多数の遺伝子変異について一度に詳細に検査する遺伝子パネル検査が導入され、大腸がん患者の2~3%では、BRAF遺伝子にこれまで調べていた異常とは異なるタイプのBRAF遺伝子変異が存在することがわかってきた。しかし、新たなBRAF遺伝子変異が見つかったがん患者に対し、抗EGFRを使用するべきかについては明らかにされていなかった。そこで研究グループは、新たなBRAF遺伝子変異を有する大腸がんにおいて、抗EGFR抗体が有効か検討した。

日米5,000例超の症例を解析、タイプ3で抗EGFR抗体が有効

研究グループはまず、先行していた研究および、がん細胞株、マウスを用いた実験から、BRAF遺伝子変異を3つのタイプに分類。タイプ1は以前より抗EGFR抗体が効かなくなると考えられている変異、タイプ2とタイプ3は遺伝子パネル検査により新たに見つかった変異とした。マウスの実験では、タイプ3の遺伝子変異はタイプ2と比べて、がん細胞の増殖にEGFRの関与が大きいと考えられた。したがって、タイプ3では抗EGFR抗体が効く可能性が考えられた。

しかし、BRAF遺伝子異常のタイプ2とタイプ3の異常は、両者を合わせても2~3%と少なく、これらの患者における抗EGFR抗体の効果を検証するには多くの患者データが必要だった。このため、愛知県がんセンターに加え、国立がん研究センター東病院を中心とした産学連携全国がんスクリーニングプロジェクト( )・米国メモリアルスローンケタリングがんセンター・ハーバード大学と国際共同研究を行い、5,000例を超える遺伝子パネル検査を行った大腸がん症例を解析。その結果、タイプ2またはタイプ3のBRAF遺伝子変異を有し抗EGFR抗体を使用された患者が40人見つかった。この40人の患者における抗EGFR抗体の効果を解析したところ、タイプ2の患者では12人中1人のみ効果があったのに対し、タイプ3のBRAF変異を有する患者では28人中14人と多くの症例で抗EGFR抗体の効果があることが判明した。

研究グループは、以前にタイプ1の遺伝子変異を有する患者に対し有効な治療法についても報告しており、今回の報告と合わせ、BRAF遺伝子変異を有する患者に対し遺伝子変異タイプをもとに個別化した有効な治療法を提示できるようになると期待される。研究グループは、今後も遺伝子パネル検査で見つかるさまざまな遺伝子異常に対応した治療法の開発を続ける予定としている。

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