視神経と脊髄の炎症性病変を特徴とする中枢神経系の自己免疫疾患
中外製薬株式会社は9月12日、視神経脊髄炎スペクトラム(NMOSD:Neuromyelitis Optica Spectrum Disorder)を対象として開発中のヒト化抗IL-6レセプターリサイクリング抗体サトラリズマブ(開発コード:SA237)について、欧州多発性硬化症学会(ECTRIMS)2019で、多施設共同第3相ランダム化二重盲検プラセボ対照比較試験SAkuraStar試験の結果を報告したと発表した。
NMOSDは、視神経と脊髄の炎症性病変を特徴とする中枢神経系の自己免疫疾患。主な症状は視覚障害、運動機能障害などで生活の質(QOL)低下の原因となる。NMOSD患者は、再発経過をたどることが多く、神経の損傷や障害が蓄積される。また、NMOSDは病原性の抗体であるAQP4抗体に関わっているとされている。AQP抗体はアストロサイトと呼ばれる中枢神経に存在する細胞を標的としており、視神経や脊髄、脳に炎症を引き起こす。AQP4抗体はNMOSD患者の3分の2で認められ、さらに、炎症性サイトカインであるIL-6が、NMOSDの発症に重要な役割を果たしていることが明らかになりつつある。
2006年に視神経炎および脊髄炎を伴うNMOの診断基準、2007年に視神経炎や脊髄炎のみの症例に対するNMOSDの診断基準が提唱された。2015年に両疾患を整理・統合し、広義の疾患群として新たにNMOSDの概念が提唱され、現在広く用いられている。
今年中のグローバル申請を目指す
サトラリズマブは、IL-6シグナルを阻害することでNMOSDの再発を抑制することが期待されている。米国および欧州では、希少疾病用医薬品の指定を受領。また、NMOおよびNMOSDを対象として、2018年12月に米国食品医薬品局からBreakthrough Therapy(画期的治療薬)の指定を受けている。
SAkuraStar試験(NCT02073279)は、NMOSDを対象として、サトラリズマブを投与した際の有効性および安全性を評価した多施設共同第3相ランダム化二重盲検プラセボ対照比較試験。主要評価項目は、二重盲検期間における治験実施計画書に規定された初回再発(独立委員会により判定)までの期間。主な副次的評価項目は、疼痛用Visual Analogue Scale(VAS)スコア、Functional Assessment of Chronic Illness Therapy(FACIT)疲労尺度スコアであった。
試験の結果、再発リスクを55%減少させ、統計学的な有意差をもって主要評価項目(二重盲検期間における治験計画書に規定された初回再発までの期間)を達成(ハザード比:0.45[95%信頼区間:0.23-0.89]、p=0.0184[層別log-rank検定])。また、事前に規定されたサブグループ解析の結果、サトラリズマブの抗AQP4抗体陽性群に対するプラセボ群の再発までの期間のハザード比は0.26だった(N=64、95%信頼区間:0.11-0.63)。さらに、サトラリズマブは治験期間を通じて良好な安全性プロファイルを示した。重篤な感染症を含む重篤な有害事象の発現率は、サトラリズマブ群とプラセボ群で同様だったという。
同社は、今年中のグローバル申請を目指しロシュと協働していくと述べている。
▼関連リンク
・中外製薬株式会社 ニュースリリース