■ゾフルーザは「非推奨」
医薬品の使用指針としてフォーミュラリーが注目を集める中、昭和大学病院附属東病院はインフルエンザ治療薬のフォーミュラリーを策定し、今年初頭の冬のシーズンから運用を開始した。「タミフル」(一般名:オセルタミビル)の後発品を第1推奨薬に設定し、インフルエンザ治療薬の使用率を解析したところ、オセルタミビル後発品の使用率は、前年に比べて16ポイント増の59%に高まったことが分かった。非推奨薬のゾフルーザの使用率は、市場の平均的なシェアよりも低い8%に抑えられていた。フォーミュラリーによって医薬品の適正使用を推進できたという。
インフルエンザ治療薬のフォーミュラリーを策定したのは、ゾフルーザの臨床試験で、薬剤投与による変異ウイルスの検出や薬剤感受性低下が明らかになったことがきっかけである。
同院薬局の吉川雅之氏は、「薬剤耐性ウイルスの蔓延が懸念されたため、薬剤部の発案で策定することになった。策定作業には医師にも加わってもらった」と説明する。
様々なエビデンスを集めて各薬剤の有効性、安全性、経済性、合理性を比較し、オセルタミビルの後発品を第1推奨薬に設定した。二つのメタアナリシスの結果によって有症状期間が約1日減少することが確認されているほか、予防効果や経済性も考慮して選定した。第2推奨薬には吸入剤の「リレンザ」を選んだ。
一方、ゾフルーザは、オセルタミビルに比べて有効性に有意差はなく、利便性は高いものの、薬価は5~10倍になり経済性は劣るため非推奨とした。イナビルは、プラセボとの比較で有効性が認められておらず、薬価はオセルタミビルの3倍に達するため非推奨とした。
同院の入院・外来患者を対象に、フォーミュラリー導入前後のインフルエンザ治療薬の使用率を解析したところ、2018年1~3月の導入前に比べて19年1~3月の導入後は、オセルタミビル後発品の使用率は16ポイント増の59%に高まった。
一方、非推奨薬のイナビルの使用率は、24ポイント減の27%となった。ゾフルーザの使用率は8%であった。
フォーミュラリーは、医師の処方権を制限するものではなく、あくまでも推奨薬を提示することにとどまるが、それでも第1推奨薬の使用率は高まりを見せ、ゾフルーザの使用率を抑えることができた。
入院患者に対しては、薬剤師が積極的にオセルタミビルの後発品を推奨した結果、8割以上の患者に同剤が使われ、ゾフルーザを使用した患者はいなかった。
吉川氏は「フォーミュラリー作成によって治療が標準化され、耐性など安全性に課題のある新規治療薬の使用を抑え、推奨薬の使用率が増加した」としている。
昭和大学系列8病院の薬剤部は共同で、糖尿病治療薬、アレルギー性鼻炎治療薬、高血圧治療薬など様々な領域のフォーミュラリーを作成し、各病院に導入している。
インフルエンザ治療薬のフォーミュラリーは今年初頭の冬のシーズンに昭和大学病院附属東病院と昭和大学病院の2病院に導入された。19年度には、系列8病院の全てが導入する計画である。今後は、地域フォーミュラリーとして拡大することも視野にある。