日本では従来法で胎児RhD血液型検査不可のケースが多く
国立成育医療研究センターは9月9日、妊婦の血液から「胎児RhD血液型」を判定する新たな出生前胎児遺伝学的検査法を開発したと発表した。この研究は、同センター研究所周産期病態研究部、同病院周産期・母性診療センターらのグループが、東京慈恵会医科大学、昭和大学、聖マリアンナ医科大学と共同で行ったもの。研究成果は米国臨床化学会誌「Clinical Chemistry」に掲載された。
画像はリリースより
RhD血液型不適合妊娠は、RhD陰性血液型の妊婦がRhD陽性赤血球を持つ胎児を妊娠することで発症する、重篤な同種免疫性胎児疾患。日本ではRhD陰性妊婦の場合、全例に対して血液製剤投与を行い疾患の予防を行うが、胎児RhD血液型を出生前に正確に検査可能となれば、予防的な血液製剤の投与が不要になる。
血液中には、さまざまな組織・細胞から流出した短いDNAが存在している。妊婦の血液には、母体由来と胎児由来の短いDNAが存在しており、これらを利用したさまざまな出生前検査が、既に臨床応用されている。妊婦の血液を用いた胎児RhD血液型の出生前検査は、欧州を中心に実施されているが、従来法はPCRによる定性検査のため、遺伝子の変異によっては出生前検査が困難だ。RHD遺伝子の欠失以外によるRhD陰性妊婦が多い日本や東アジアでは、従来法で胎児RhD血液型を検査できないケースが多くある。
日本人など東アジア人症例で99%以上をカバー
胎児RhD血液型の出生前検査を行うためには、微量に存在する胎児由来のDNAを対象に、野生型や欠失変異、点変異(野生型と1塩基のみ異なる)といったさまざまなRHD遺伝子の種類を判別する必要がある。日本人や東アジア人のRhD陰性者は、欠失変異、点変異、組み換え変異のRHD遺伝子の変異で99%以上を占める。
研究グループは、これら3種類のRHD遺伝子の変異と、野生型(RhD陽性)の計4種類を効率よく区別する4箇所の遺伝子マーカーを選択した。この4か所を含む領域をそれぞれPCR増幅させた後、次世代シークエンサーを用いて、高解像度・高感度の多型解析により正確に区別した。この方法により、母体のRHD遺伝子の変異に関わらず、胎児が野生型のRHD遺伝子を持つか否かを判定することで、胎児RhD血液型の出生前検査を行うことが可能になったという。
今回の研究により、母体のRHD遺伝子の変異に関わらず胎児RhD血液型の出生前検査が可能になった。日本人や東アジア人の一部で胎児の血液型の出生前検査が困難だった症例に対しても、分子遺伝学的な根拠に基づく厳密な診断・治療方針が立てられるようになり、日本におけるRhD血液型不適合妊娠の診断・治療方針が変わることが期待される、と研究グループは述べている。
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・国立成育医療研究センター ニュースリリース