不均一な脂肪分布の場合、生検箇所によって結果が異なるなどの課題
東邦大学は9月6日、MRIを用いた脂肪肝の新規解析手法を確立したと発表した。この研究は、同大医学部内科学講座糖尿病・代謝・内分泌学分野の熊代尚記准教授の研究グループによるもの。研究成果は、「Hepatology Research」にオンライン掲載された。
画像はリリースより
脂肪肝は、日本人の3~4人に1人が有するといわれており、インスリン抵抗性や肝線維化を引き起こし、2型糖尿病・心血管疾患・肝硬変・肝細胞がん・腎不全などにもつながる。
これまでの肝臓内脂肪測定法では、特に、肝生検による組織学的評価が重要視されてきたが、肝生検は侵襲的であり費用面でも負担が大きかった。また、不均一な脂肪分布を認める場合、生検結果は生検箇所によって異なり、短期間で繰り返し実施できないことも課題だった。そのため、侵襲的でないMRIを用いた方法などが開発されたが、これまでは肝臓画像の限定された部分の評価しかされず、不均一な肝臓内脂肪蓄積を正確に測定できない点で、肝生検同様、課題が残っていた。
MRIの肝臓画像全断面、全ポイントを評価する脂肪肝評価法
今回、研究グループは、MRIの肝臓画像の全断面、全ポイントを評価する新規の脂肪肝評価法を確立。この方法では、MRIのDixon法で撮影した肝臓の全断面の水・脂肪画像を専用のソフトを用いて同じスライスで重ね合わせ、脂肪/(水+脂肪)により脂肪の信号強度を表す画像を作成した。そして、この画像上の全voxelに対して脂肪割合の少ない順に青、緑、黄、橙、赤と段階別に色をつけ、脂肪分布マップを作成。さらに、全voxelの脂肪割合、そのvoxelの個数、voxelのサイズを基に、肝臓全体における総脂肪割合、肝臓全体の体積、総脂肪体積、総除脂肪体積も算出可能とした。
この新規手法による脂肪肝診断の正確性を、従来の1H-MRS法と比較し評価した。肝生検結果におけるNAFLD Activity Score(NAS)の脂肪化の点数区分毎にROC解析を実施した結果、新規手法の診断的正確性が示されたという。また、新規手法での全肝臓脂肪割合はNASの脂肪化の点数と有意に関連しており、1H-MRS法の肝臓内脂肪割合とも有意に相関しており、全肝臓脂肪体積と1H-MRS法の肝臓内脂肪割合も有意に相関していた。一方で、両者の方法で脂肪割合の値に差がある症例が存在し、脂肪マップを確認したところ、肝臓全体の色の付き方が不均一であり、いわゆるまだら脂肪肝であることが視覚的に確認できたという。
この新規手法は繰り返しの評価が可能であり、健康診断や人間ドック等での定期的な観察にも活用できる。この手法を用いて、総脂肪量、総除脂肪体積、総肝臓体積を個々に算出できるため、肝不全、肝移植、肝再生医療などを含めた今後の肝臓に関する先進医療の開発研究にも応用が期待される、と研究グループは述べている。
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・東邦大学 プレスリリース