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指定難病「自己免疫性肺胞蛋白症」、GM-CSF吸入に治療効果-新潟大ら

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2019年09月09日 PM12:30

サーファクタントが貯留し、呼吸不全が進行する希少難病

新潟大学は9月5日、指定難病である自己免疫性肺胞蛋白症の病因解明に基づく新しい治療法を開発したと発表した。この研究は、同大学医歯学総合病院 臨床研究推進センターの中田光教授らを中心とする研究グループ(全国12施設)が、2016 年から続けてきた日本医療研究開発機構(AMED)の難治性疾患実用化研究事業における研究開発課題「自己免疫性肺胞蛋白症に対する酵母由来組換GM-CSF吸入の多施設共同医師主導治験」および日本肺胞蛋白症患者会のサポートを受けて行ったもの。研究成果は、「The New England Journal of Medicine」に掲載されている。


画像はリリースより

自己免疫性肺胞蛋白症は、肺胞および細気管支に、肺を内側から覆っている「」という粘液が貯留し、呼吸不全が進行する希少難病。日本には推定3,300人の患者がいるとされ、働き盛りである50歳代男性に好発し、2割は在宅酸素療法を余儀なくされる。現在の標準治療は、全身麻酔下に片肺20~30Lの生理食塩水で洗浄する全肺洗浄法で、患者にとって苦痛を伴う。

この疾患は、1958年に第1例が報告されて以来、長年病因不明だったが、1999年に中田教授らは、血液および肺に大量の抗GM-CSF自己抗体が存在することを発見。健常な肺胞では、2型上皮細胞かららサーファクタントとGM-CSFが放出される。1個の肺胞には50個程度の肺胞マクロファージが存在し、古くなった余分なサーファクタントを取り込んで消化している。肺胞マクロファージが育ち、活動するためにはGM-CSFが不可欠だが、自己免疫性肺胞蛋白症では、自己抗体によりGM-CSFが枯渇し、サーファクタントの老廃物が溜まるという仕組みがわかった。後に抗GM-CSF自己抗体を利用した血清診断法が開発され、次いで、2005年に研究グループの田澤教授(現:東京医科歯科大)らが重症の肺胞蛋白症患者にGM-CSFを吸入投与することにより、呼吸機能が改善することを報告し、全世界に次第に同治療法が普及していった。

GM-CSFの吸入に治療効果、患者負担の少ない新治療法へ

今回の治験では、2016年9月から12月まで、全国12施設(北海道大学、東北大学、、千葉大学、国際医療研究センター、杏林大学、愛知医科大学、京都大学、国立病院機構近畿中央呼吸器センター、神戸市立医療センター 中央市民病院、倉敷市立市民病院、長崎大学)の呼吸器内科医が共同で、自己免疫性肺胞蛋白症患者から治験協力の同意を得て、6か月間のGM-CSF(実薬)または偽薬の吸入ののち、偽薬群の患者を含め4か月間の治療を行ってデータを集め、解析した。

研究グループは、患者も医師も投与している薬がGM-CSF(実薬)なのか偽薬なのかを知らない二重盲検法により、その効果を検証。具体的には、33人はGM-CSFの実薬を、30人は偽薬を吸入し、動脈の中の酸素圧、肺の酸素の取り込みや血清マーカーの改善を実薬群と偽薬群の間で比較した。その結果、問題となるような副作用は現れず、肺胞気-動脈血酸素分圧較差とよばれる酸素の取り込み能力について、実薬群は偽薬群に比べて統計的に優位な差がみられ、GM‐CSFの実薬のほうが優れていることが証明された。

GM-CSF吸入療法は、枯渇したGM-CSFを外から補う新しい治療法。1日2回20分程度の吸入を自宅において24週間隔週で続けるものであるため、何よりも患者にとって楽な治療であることが特徴だ。GM-CSFはすでに薬剤(商品名Leukine)として海外では上市されているが、日本では未承認薬。今後、国内における薬事承認申請と保険収載を目指す企業を募集していく予定だという。さらにGM-CSFは自己免疫性肺胞蛋白症にとどまらず、肺の感染防御能を高めることが期待されることから、「非結核性抗酸菌症や肺アスペルギルス症などの肺難治性感染症の治療に適応拡大されていくことが予想される」と、研究グループは述べている。

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