Ⅰ型インターフェロン受容体を標的とする新薬候補
英アストラゼネカ社は8月29日、標準治療を受けた全身性エリテマトーデス(SLE)の患者を対象とした第3相TULIP2試験において、SLE治療の新薬候補であるanifrolumabは、プラセボと比較して統計学的に有意かつ臨床的に意義のある疾患活動性の低下を示し、主要評価項目を達成したと発表した。
SLEは、免疫系が自身の正常な細胞や組織を攻撃してしまう自己免疫疾患。慢性的であり、さまざまな臨床症状を伴う複雑な疾患であるため、多くの臓器に影響を及ぼし、痛み、発疹、倦怠感、関節の腫れ、発熱など幅広い症状の原因となる。さらには、感染症や心血管疾患などが原因の死亡リスク上昇にもつながる。SLE治療薬として承認を受けた新薬は、この60年間で1つしかない。
Anifrolumabは、Ⅰ型インターフェロン受容体のサブユニット1に結合する完全ヒトモノクローナル抗体で、IFN-alpha、IFN-beta、IFN-omegaなど、全てのⅠ型インターフェロンの活動を阻害する。Ⅰ型インターフェロンは、炎症反応経路に関係するサイトカイン。SLEの成人患者の60~80%に、疾患活動性との相関性が明らかになっているⅠ型インターフェロン遺伝子特性の増加が見られる。
AnifrolumabはSLE患者の疾患活動を減少
同試験では、疾患活動性の低下をBritish Isles Lupus Assessment Group based Composite Lupus Assessment (BICLA)指標に基づいて52週間測定した。BICLAでは、ベースライン時に疾患活動性を持つ全ての臓器において疾患活動性が改善し、かつ、疾患活動性を持たない臓器に新たなフレアの出現が存在しないことを条件としている。anifrolumabの安全性は、これまでに行われた試験の安全性プロファイルと相違なかった。
TULIP2試験は、中等症から重症のSLEの成人患者を対象に、anifrolumabの安全性および有効性を評価する2つ目の第3相試験。条件に該当する373人の患者を無作為化し(1:1)、300mgのanifrolumab投与群とプラセボ投与群に分け、4週間ごとに静脈注入を一定用量行った。BICLAに基づいて疾患活動性の低下を測定することにより、anifrolumab の有効性を評価した。TULIP2の良好なBICLA評価は、前回の第3相TULIP 1試験で事前に設定した解析と一致していた。なお、TULIP1試験では、主要評価項目である12か月時点のSLE反応指標(SRI4)は達成できなかった。
TULIP1試験およびTULIP2試験のより詳しいデータは、今後の学会で発表される予定。なお、anifrolumabは日本では未承認。
▼関連リンク
・アストラゼネカ株式会社 プレスリリース