ダイエットを契機に発症、極度の低体重を呈する神経性やせ症
九州大学は9月3日、腸内細菌叢の異常が神経性やせ症の病態に関わっていることを明らかにしたと発表した。同研究は、同大大学病院の波夛伴和助教、同大大学院医学研究院の須藤信行教授の研究グループが、東海大学医学部の感染症学教室、精神科学教室と共同で行ったもの。研究成果は「Endocrinology」でオンライン公開された。
画像はリリースより
神経性やせ症は、ダイエットなどを契機に発症し、極度の低体重を呈する。この病気は、有効な治療法が限られており、病態の解明や新たな治療法の開発が喫緊の課題だ。これまでの研究で、神経性やせ症では腸内細菌叢に異常があることが知られていたが、その異常が病態にどのように影響するかについては明らかになっていなかった。
やせ症型マウスではバクテロイデス属の腸内細菌が減少
今回研究グループは、無菌マウスに神経性やせ症女性患者または健常女性の糞便を移植して、ヒト型の腸内細菌叢をもつ人工菌叢マウス(やせ症型マウス、健常型マウス)を作製した。無菌アイソレーター内で、これらのマウスの体重増加率を経時的に測定し、行動特性を評価した。その結果、やせ症型マウスは、健常型マウスと比べて体重増加が不良であり、不安様行動が高いことが明らかになった。また、やせ症型マウスでは、バクテロイデス属の腸内細菌が減少しており、同じグループの腸内細菌を投与すると不安様行動が正常化したという。
神経性やせ症の低体重期では、体重増加のために多くの食物摂取を要す食物効率の低下、強い不安や強迫性などの精神症状を合併することが知られている。今回の研究結果は、これら神経性やせ症に特徴的な病態の一端を明らかにするとともに、体重増加を目的とした新たな治療法の開発に寄与するものになる、と研究グループは述べている。
▼関連リンク
・九州大学 研究成果