1,199組の母子を対象とした九州・沖縄母子保健研究
愛媛大学は9月3日、妊娠中の野菜、りんごとかんきつ類などの果物類、ビタミンCの摂取と生まれた子の行動的問題との関連を示す研究成果を初めて発表した。同研究は同大大学院医学系研究科疫学・予防医学講座の三宅吉博教授らが東京大学、琉球大学と共同で行ったもの。研究成果は、学術誌「Nutrition」電子版に掲載された。
これまで、妊娠中の母親が抗酸化物質を摂取することで、母子に対する過度な酸化ストレスやそれに起因する健康問題を防ぐ可能性が考えられてきた。しかし、妊娠中の野菜、果物、抗酸化物質摂取と生まれた子の行動的問題との関連を調べた疫学研究はなかった。
今回の研究は、九州・沖縄母子保健研究に参加した1,199組の母子を対象とした。妊娠中に食事歴法質問調査票を用いて妊婦の栄養データを集め、5歳児追跡調査で保護者にStrengths and Difficulties Questionnaire(SDQ:子どもの強さと困難さアンケート)の親評定フォームで回答を得た。これによって、妊娠中の野菜、果物、抗酸化物質摂取と子の5歳児における行動的問題との関連を調査した。
果物、特にりんごの摂取は多動問題のリスク低下と関連
調査の結果、1,199名の5歳児において情緒問題は12.9%、行為問題は19.4%、多動問題は13.1%、仲間関係問題は8.6%、低い向社会的行動は29.2%に認められたという。妊娠中の総野菜摂取と緑黄色野菜摂取は低い向社会的行動のリスク低下と関連し、緑黄色野菜以外の野菜摂取は多動問題および低い向社会的行動のリスク低下と関連していることが判明。果物、特にりんごの摂取は多動問題のリスク低下と関連し、かんきつ類摂取は情緒問題、行為問題および多動問題のリスク低下と関連していた。ビタミンC摂取は行為問題、多動問題および低い向社会的行動のリスク低下と関連していたことが明らかとなった。
今回の研究結果は、妊娠中の野菜、果物(特にりんごとかんきつ類)、ビタミンC摂取が、生まれた子の仲間関係問題を除くいずれかの行動的問題に予防的である可能性を示したという。「今後、さらなる研究データの蓄積が必要となるものの、妊娠中の食習慣の変容により、子どもの行動的問題を予防できる可能性を示す研究成果だ」と、研究グループは述べている。
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・愛媛大学 プレスリリース