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血中マイクロRNAのメチル化測定により、高精度で早期膵がんの検出に成功-阪大ら

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2019年09月04日 AM11:30

早期発見が難しいがんを高精度に検出する技術の開発

大阪大学は8月30日、血液中に含まれるマイクロRNAのメチル化率を測定することにより、既存の腫瘍マーカーよりはるかに高感度、高精度にがんを検出可能な技術の開発に成功したと発表した。この研究は、同大大学院医学系研究科の今野雅允寄附講座講師(先進癌薬物療法開発学寄附講座)、石井秀始特任教授(常勤)(疾患データサイエンス学共同研究講座)、江口英利准教授(消化器外科)、森正樹教授(消化器外科)(研究当時)、土岐祐一郎教授(消化器外科)らと、大房健所長ら()の共同研究グループによるもの。研究成果は、英国科学誌「Nature Communications」に掲載されている。


画像はリリースより

RNA(特にマイクロRNA)は血液中を巡回しており、がん患者では、がん細胞由来のマイクロRNAが血液中に存在することが知られている。これまでの研究により、がん細胞由来の血液中マイクロRNA量を測定することでがんの診断を行う試みが進められてきた。この手法によるがん診断は、既存の腫瘍マーカーと同程度か、それより上回る精度でがんを診断することが可能となりつつある。しかし、早期の膵臓がんのような発見が難しいがんもあるため、こうした発見困難ながんを、さらに高感度、高精度に検出する技術の開発はがんの根絶に向けて非常に重要な課題であると考えられている。

これまで、RNAはアデニン(A)、グアニン(G)、シトシン(C)、ウラシル(U)という4種類の塩基で構成されていると考えられていた。しかし、近年これらの4種類の塩基は化学修飾を受け、さまざまな塩基へと変換されていることが明らかになりつつある。研究グループは、これらの化学修飾を受けたRNAの塩基を簡便に検出する技術の開発を行った。

血中マイクロRNAのメチル化率が優れたマーカーに

今回、研究グループは質量分析器(MALDI-TOF-MS)を用いて、化学修飾を受けたRNAの塩基を簡便に検出することに成功。この手法を用いてがん患者(胃がん、大腸がん、ステージ3、4の膵臓がん)および健常人の血液中のマイクロRNAの塩基修飾(今回はアデニンのメチル化)を測定したところ、がん患者の血液に含まれるマイクロRNAはアデニンのメチル化率が上昇していることが明らかとなった。

また、手術前後の血液を用いて測定を行ったところ手術前に比べてがんを摘出した手術後では、アデニンのメチル化率が減少していることが判明。これらのことから、アデニンのメチル化は各種がんの検出および手術後のがんの残存を判定するマーカーとなることが示された。さらにこれまで検出が困難であったステージ1、2の早期膵臓がん患者の血液中に含まれるRNAのメチル化率の測定を行った結果、現在臨床で使用されている腫瘍マーカーのCA19-9やCEAに比べて有意に感度・特異度よくがんを検出することができた。したがって、RNAのメチル化を測定する同手法は従来の腫瘍マーカーよりも優れたマーカーとなることが示唆された。

今回の研究成果により、RNAのメチル化を測定することはがんの診断に有用であることが示された。この技術を応用、発展させることで、がんの有無だけではなく、がんの種類、がん摘出手術後のがんの残存および治療に対する反応性を予測する技術の確立が期待される。「これが実現すれば、がんを現在より早期に高精度、高感度に発見できるだけでなく、治療効果の予測に対する優れた指標を得ることとなり、がん患者の生存率が飛躍的に上昇することができると期待される」と、研究グループは述べている。

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