SHCAは、今年4月から子宮頸癌検診の未受診者向けに薬局を活用したHPV(ヒトパピローマウイルス)の自己チェックサービスを開始しているが、名城大薬学部実践薬学IIの牛田誠准教授らは、薬局薬剤師による未受診者対策としての価値を見出すためには、研究を含めた評価が必要と判断。愛知県内の4薬局を対象に、来局した20歳以上の女性に対して薬剤師が子宮頸癌の啓発を行うことのニーズを調査することにした。
牛田氏が主任研究者を務める調査研究は、検体測定室など健康サポート活動で実績がある愛知県内の4薬局に来局し、同意を得た20歳以上の女性が対象。子宮頸癌に関する講習を受けてもらい、講習会実施前後にアンケート調査を行うことで、どのくらい子宮頸癌への知識や理解が深まったかを確認する。薬局が子宮頸癌検診の啓発活動を行うことに対する来局者の反応や意見も聞き取る。
具体的に、自己記入式の事前アンケートでは、子宮頸癌検診の受診やワクチン接種の有無、検診の必要性、セルフチェックサービス(HPV検査キット)の希望有無を尋ねるほか、検診を受けるに当たって最も抵抗に感じることなどを尋ねる。その後、薬局薬剤師が約30分から1時間かけて講習を行い、子宮頸癌は予防できる癌であることや検診の重要性を説明する。
終了後は、来局者に事後アンケートを行い、改めて子宮頸癌検診は必要と考えるか、検診を受けたいか受けたくないかを五つの選択肢で尋ねると共に、クイズ形式で理解度を確認するという流れになる。
調査研究はまだ始まったばかりだが、牛田氏は、「今回の取り組みは、薬局における検診未受診者対策の活動を実際に店頭でどう進めていくかが一番のポイント。未受診の理由に、婦人科の受診は敷居が高いことや抵抗感があることが挙げられていたが、街の薬局で気軽に相談できるのは非常に有効との意見が出ている」と手応えを語る。
共同研究者の名城大学薬学部薬効解析学の水野智博助教は、「これまで薬局薬剤師が癌検診の受診勧奨をするような取り組みは行われていなかったが、一定の質が担保された薬剤師による介入効果を出すことで、薬局薬剤師の社会的認知度の向上につながるのではないか」と期待感を示す。
SHCAの岡崎光洋代表理事は、今回の研究に当たって、子宮頸癌検診のニーズがない人に興味を持ってもらうことの重要性を強調。「調剤以外で薬局を活用してもらうために必要なツール、行動変容につながる会話術、掲示するチラシなども含めてマニュアルを作りたい」との考えを明らかにした。
薬局による健康フェアや健康サポート薬局の活動が低調な理由として、効果測定を実施していないことが指摘されている。調剤業務の頭打ち感が強まる中、健康サポート活動として、薬局薬剤師が行った子宮頸癌検診の啓発活動という介入の効果をきちんと評価し、精度の高い介入研究につなげられるかどうか注目されそうだ。