イソフラボンの抗炎症効果を生かした治療法確率へ
大阪市立大学は8月23日、大豆などに含まれるイソフラボンが慢性閉塞性肺疾患(COPD)の予防効果を有することを明らかにしたと発表した。この研究は、同大大学院医学研究科呼吸器内科学の小島和也大学院生、浅井一久准教授、川口知哉教授らの研究グループによるもの。研究成果は、国際科学雑誌「Nutrients」にオンライン掲載された。
画像はリリースより
COPDは、主にタバコ煙を含む有害物質の吸入により発症する肺疾患。進行すると咳や痰、息切れを自覚し、在宅酸素療法を必要とする患者もいる。同病による死亡者数は年々増加しており、WHOの報告では世界の死因第3位の疾患とされる。COPD患者の肺では、マクロファージや好中球などの炎症細胞の増加、肺胞壁の破壊による肺気腫が見られる。現在の治療は、悪化した肺機能を改善させることを目的に気管支拡張剤の吸入を行っているが、その効果は限定的であり根本治療ではない。COPD予防には早期の禁煙が重要だが、新たな予防・治療法の確立が望まれていた。
一方、大豆製品に含まれるイソフラボンには抗炎症効果が報告されており、疫学研究において大豆製品の摂取量が多い群は、少ない群に比べて、COPDになりにくいと報告されている。また、息切れや咳、痰の症状が軽減される可能性も指摘されているものの、そのメカニズムの詳細は解明されていなかった。
マウス実験で好中球性炎症の抑制を確認
研究グループは、マウスに12週間の喫煙曝露を行い、餌へのイソフラボン添加の有無がCOPD病態へおよぼす影響を検討。その結果、イソフラボン投与群では、気管支肺胞洗浄液(BALF)中の好中球数が有意に減少し、肺気腫の程度を示すMLI(平均肺胞径:mean linear intercept)の上昇を抑制させたことがわかった。
また、好中球性炎症を抑制した機序を検討するために、肺組織内の炎症を誘導するサイトカインやケモカインのメッセンジャーRNA(mRNA)やBALF中のタンパク質を測定したところ、肺組織中のサイトカインであるTNF-α(腫瘍壊死因子)やケモカインの喫煙曝露による増加がイソフラボン投与により有意に抑制されていた。
今回の研究結果によって、イソフラボンの投与により好中球性炎症が抑制され、肺気腫が予防されることが示され、疫学研究で報告された大豆摂取によるCOPD予防効果のメカニズムの一端が解明された。今後のCOPD治療確立に向けて重要な知見であるといえる。
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・大阪市立大学 プレスリリース