現行のワクチンは、異なるインフルエンザ亜型への有効性が低い
日本医療研究開発機構(AMED)は8月28日、さまざまなインフルエンザ亜型を防御するヘマグルチニン抗体を発見するとともに、この抗体を誘導しやすい改変型抗原を特定したと発表した。この研究は、AMEDの新興・再興感染症に対する革新的医薬品等開発推進研究事業において、国立感染症研究所免疫部の高橋宜聖部長、安達悠主任研究官らの研究グループによって行われたもの。研究成果は、「Nature Communications」に掲載された。
画像はリリースより
さまざまなA型インフルエンザ亜型を防御するヘマグルチニン抗体(交差防御抗体)は、現行のインフルエンザワクチンでは誘導されにくいという問題を抱えている。また、異なるインフルエンザ亜型への有効性が低く、季節性・鳥インフルエンザ共に有効な次世代ワクチンの開発が望まれていた。
全てのA型インフルエンザに有効な万能ワクチンの開発へ
研究グループは、インフルエンザウイルスの複製が生じるマウスの気道部位において、交差防御抗体が誘導されやすいという、これまでの研究成果を発展させ、ハイスループットな手法で交差防御抗体を網羅的に特定し、免疫学的な解析を行った。その結果、さまざまなインフルエンザウイルスを防御可能な抗体が、隠れた抗原領域を認識することを発見。そして、この抗原領域を酸性処理により露出させることに成功した。
この改変型抗原をヒト化マウスに接種すると、ヒト交差抗体が誘導されること、その交差性が季節性インフルエンザウイルスと鳥インフルエンザウイルスをカバーすること、マウス感染モデルで防御能を示すことも見出したという。また、この改変型抗原は、現行ワクチン抗原から比較的簡単な手順で作製することが可能であり、実用化の点でもメリットがあると考えられる。
この研究成果は、全てのA型インフルエンザに有効な万能インフルエンザワクチンへの開発に役立つとして、今後の研究に期待が寄せられる。
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・日本医療研究開発機構(AMED) プレスリリース