岡山大学開発のCTガイド下針穿刺ロボット
岡山大学は8月27日、岡山大学で開発したCTガイド下針穿刺ロボット「Zerobot(R)」を用いて人に対する初めての臨床試験を実施したと発表した。この研究は、岡山大学大学院医歯薬学総合研究科の平木隆夫研究教授、同大大学院自然科学研究科の松野隆幸准教授、同大大学院ヘルスシステム統合科学研究科の亀川哲志講師らの研究グループによるもの。研究成果は、ヨーロッパの科学雑誌「European Radiology」に掲載されている。
画像はリリースより
医師が、CTを撮影操作しながら腫瘍に針を穿刺して行う検査や治療のCTガイド下IVR(画像下治療)は、手技時間が短時間で患者への負担が小さく、超高齢化社会におけるがん医療として需要が高まっている。しかし、CT装置の近くで手技を行う医師は、CT撮影の際に出る放射線により被曝してしまうという欠点がある。そこで研究グループは、放射線の届かないCT装置から離れた場所で、遠隔操作により針を穿刺できるロボットを開発してきた。
医師が被曝せず手ブレのない高精度な針の穿刺が可能に
研究グループは、2018年6~10月にかけて、腎臓、肺、縦隔、副腎、筋肉に腫瘍がある10例の患者に対して、ロボットを用いてCTガイド下に針の穿刺を行い、腫瘍の病理検査を実施。ロボットによる腫瘍への針穿刺は10例全例で成功し、ロボットの不具合や重篤な有害事象はみられなかった。また、術中の医師への放射線被曝線量を測定した結果、検出されなかった。そでに内視鏡手術用のロボットは国内で導入されているが、針の穿刺を行うロボットは国内では初めてだとしている。
ロボットの使用で、医師は被曝することなく、手ブレのない高精度な針の穿刺が可能となる。手技の自動化も可能であり、それにより手技時間の短縮、患者被曝の低減、さらには経験の少ない医師でも簡単に手技を行うことが期待できるという。また、遠隔医療への応用が期待され、もし実現すれば、医師の少ないへき地でも最先端のがんに対する低侵襲医療が可能となる。また、ロボットの普及により、安価で実施でき、患者の体に負担の少ないIVRがさらに普及すれば、患者の生活の質(QOL)の向上や医療費の削減も期待されるという。
同研究は、2019年から日本医療研究開発機構(AMED)の「革新的がん医療実用化研究事業」において採択され、研究開発を行っている。研究開発では、3年間の事業期間内で薬事承認申請に向けた治験を実施する予定となっており、現在、治験に向けたさまざまな準備を行っているとしている。
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・岡山大学 プレスリリース