溝神氏らは、フレイルや歩行レベル低下が見られる認知症患者の周辺症状(BPSD)対策で使われた薬が効き過ぎたため、褥瘡を発現した症例を立て続けに経験した。その経験をもとに、様々な薬剤の副作用として過鎮静や無動が生じたり、ADLが低下して褥瘡が発現する場合があるとし、これを薬剤誘発性褥瘡と定義して注意を呼びかけてきた。
今回、全国的な実態や原因薬剤などを明らかにする目的で調査を実施。同学会会員から3000人を無作為に抽出してアンケートを送付し、1323人から回答を得た(回答率44.1%)。回答者の職種は医師33%、看護師48%、薬剤師10%などとなっていた。
「薬剤誘発性褥瘡という言葉や概念を知っているか」と聞いたところ、「知っている」は33%、「知らない」は67%だった。多くの医療従事者にはまだ概念が十分に浸透していないことが分かった。
一方、同概念を噛み砕いて「鎮静作用を有する薬物の投与に伴い、過鎮静や無動となり褥瘡発生に至る事例を経験したか」と聞いたところ、「経験がない」は25%だったのに対し、「過去に経験がある」は39%、「過去にあったかもしれない」は36%だった。
これらを合わせると、薬剤誘発性褥瘡と見られる症例を経験した医療従事者は75%に達することが明らかになった。
経験があると回答した人に「過去に何症例くらい経験したか」と聞くと、平均で8.65症例を経験していた。原因薬剤としては「催眠・鎮静薬や抗不安薬」39%、「精神神経用剤」16%、「全身麻酔剤」16%、「麻薬」13%の順に多かった。
24日に京都市内で開かれた同学会学術集会で調査結果を発表した溝神氏は、「薬剤誘発性褥瘡は一般的な褥瘡との鑑別が非常に難しいが、原因を特定できれば後は簡単で、薬を中止するだけで患者さんのADLが上昇し褥瘡が治る場合がある」と指摘。「この副作用は患者さんが訴えることができないため、医療従事者や介護者が認識していなければ発見できない。副作用として認識を高める必要がある」と呼びかけた。