渡部正之氏(メディカルユアーズ代表取締役)は、3月に「大阪梅田メディカルセンター」内に開設した薬局の機能を紹介した。ロボットが医薬品を取り出し、無人状態でも調剤済みの医薬品を患者が受け取れるほか、同センター内の内科や整形外科などの医療機関と患者情報を共有できるシステムを構築。処方箋が発行された時点で処方箋情報が入力され、患者が来局するまでに処方監査と調剤準備を行うことができる。
渡部氏は、この「ロボット薬局」により、調剤業務に従事している薬剤師2人を在宅関連業務に充てることが可能になるとの試算を示した。
その上で「テクノロジーは人間から仕事を奪うのではなく、より人間らしい仕事を与えてくれる」と述べ、ロボットによる調剤業務を評価。ロボット薬局が▽薬剤師の職能を高度化し、新しい雇用を創出▽調剤ミスをなくして医療事故から患者を守る▽待ち時間を解消して検診の受診率を高めることで早期発見を促す▽医師の過重労働を防ぐ――などの効果ももたらすとメリットを訴えた。
松尾健介氏(慶應義塾大学病院薬剤部調剤室副主任)は、ロボットとAIによる病院の調剤業務への影響について報告した。
同院は、来年から病棟薬剤業務実施加算の算定を目標とする一方、外来調剤業務が1日平均1550枚、入院調剤業務が平均650枚と多忙で、人員増に費用がかかること、調剤スペースの限界や誤薬率の減少が頭打ちといった現状を踏まえ、ロボット等の導入を決定した。
導入予定の全自動PTPシート排出装置の効果を試算したところ、SPDスタッフ2~5人分の業務をカバーし、夜勤のサポートも可能とした。
また、医療情報を外来患者のスマートフォンに送信するアプリを7月から導入し、お薬情報の電子化と薬の準備が完了した際に呼び出すシステムの運用を開始したことにも言及した。
松尾氏は「今後の調剤業務はマンパワーだけでなく、調剤ロボットとの協働が必要となる」と述べる一方、「薬剤師が楽をするための機械化ではなく、専門性を発揮するための手段と考えるべき」とした。