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思春期特発性側弯症、発症に関わる新規遺伝子座を14か所同定-理研ら

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2019年08月28日 PM12:00

日本人のAIS有病率は2~3%、10歳以上の主に女児が発症

理化学研究所は8月26日、日本人集団の遺伝情報を用いた大規模なゲノムワイド関連解析(GWAS)を行い、(Adolescent idiopathic scoliosis:)の発症に関わる疾患感受性領域(遺伝子座)を新たに14か所同定したと発表した。この研究は、理研生命医科学研究センター骨関節疾患研究チームの稲葉(黄)郁代上級研究員、大伴直央大学院生リサーチ・アソシエイト(慶應義塾大学大学院医学研究科博士課程)、池川志郎チームリーダーらが、慶應義塾大学整形外科を中心とした日本側彎症臨床学術研究グループと共同で行ったもの。研究成果は、英国のオンライン科学雑誌「Nature Communications」に掲載されている。


画像はリリースより

AISは、遺伝的因子と環境因子の相互作用により発症する多因子遺伝病。10歳以上の主に女児が発症し、日本人の有病率は2~3%。脊椎が三次元的にねじれて体幹に変形を来し、変形が進行すると腰痛や背部痛、呼吸障害を起こす。また、容姿の変形から精神面にも悪影響を及ぼす。近年、多くの疾患に対して低侵襲な治療法が開発されているが、重度の側弯症に対する治療は、侵襲が大きく脊椎の可動性も制限される脊椎矯正固定術しかない。そのため、AISの原因、病態を解明し、発症、進行の予防・治療法を確立することが求められている。

AIS、心血管系など6種類の組織・細胞種に関連

池川チームリーダーと稲葉上級研究員は2009年より、日本側彎症臨床学術研究グループと共にAISの遺伝的因子を同定する研究を続け、遺伝情報と表現型の関連を評価するGWASを用いて、AISに関連する疾患感受性遺伝子や遺伝子座を世界に先駆けて報告してきた。しかし、これまでに報告した領域だけでは、AISの遺伝的背景を説明するには十分でなかった。そこで、追加検体とその臨床情報を収集し、今回は新たな日本人集団でGWASを行い、合わせて3つの日本人集団におけるGWASを統合し、メタ解析を実施した。

研究グループは、日本人集団(AIS患者5,327人、非患者7万3,884人)におけるAISの大規模GWASのメタ解析を実施。その結果、AIS発症に関わる新しい遺伝子座を14か所同定し、さらに女性AIS患者のみを対象とした層別化解析により、女性のAIS発症に関わる遺伝子座を3か所同定した。また、同定された14遺伝子座のひとつ、22番染色体上の転写因子TBX1の遺伝子内に存在する一塩基多型(SNP)について解析し、このSNPを持つ患者に多い対立遺伝子はTBX1の発現を低下させることがわかった。さらに、遺伝統計学的手法を用いた解析により、AISが心血管系や骨格筋など6種類の組織あるいは細胞種に関連すること、BMIや尿酸値と共通の遺伝的背景を持つことが明らかになったという。

今回同定した遺伝子座位に存在する原因遺伝子を特定し、これまで原因が特定できなかったAISの原因を解明し、発症や症状の進行を予測することが可能になれば、患者個々に対応した治療方法、治療方針を確立することができる。また、研究グループは今後、海外のAIS研究グループと協力し、GWASの国際共同メタ解析を行い、さらなる遺伝子座位の同定、原因遺伝子の発見を目指すとしている。

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