通常の培養条件下で得られる筋細胞は収縮能力が未熟
東北大学は8月22日、ヒト由来筋細胞とマウス由来の筋細胞からなるハイブリッド筋管細胞を創製、さらにこの異種ハイブリッド筋管細胞に対して、適切な電気パルス刺激(EPS)を付与することにより、その収縮活動能力を飛躍的に高めることに成功したと発表した。この研究は、同大大学院 医工学研究科 病態ナノシステム医工学分野の神﨑展准教授が、同大大学院 医学系研究科 整形外科学分野の萩原嘉廣准教授、神経内科学分野の青木正志教授らと共同で行ったもの。研究成果は、「Scientific Reports」(電子版)に掲載されている。
画像はリリースより
生体に近似な特徴を持つ培養細胞系は、基礎研究から薬効評価などの応用研究に至るまで、有用な研究ツールとして各種研究開発分野で利用されている。しかし、骨格筋細胞の場合、活発に運動するという筋の特性(収縮活動)を維持できる「培養筋細胞系」に乏しく、通常の培養条件下で得られる筋細胞は、収縮能力が未熟であることから、運動能力の発達や、運動負荷試験といった高次な筋細胞機能を培養系で調べることができなかった。
「培養ハイブリッド筋細胞」で、高次筋機能を診断可能に
今回、研究グループは、ヒトから採取した筋細胞とマウス由来の筋細胞からなるハイブリッド筋管細胞を創製し、このヒトとマウスの細胞からなる異種ハイブリッド筋管細胞に対して、適切な電気パルス刺激(EPS)を付与することにより、その収縮活動能力を飛躍的に高めることに成功。さらに、このハイブリッド筋管細胞を培養皿の中で人為的に収縮運動させることによって、24種類ものヒトマイオカインが分泌されることもわかった。マイオカインは、運動刺激により筋細胞から分泌される生理活性因子として、最近、注目を集めている。
このヒトとマウスの筋細胞からなるハイブリッド筋管細胞は、EPS特殊培養装置を使うことで、培養皿内で活発に収縮運動させることができる。例えば、寝たきりの患者から採取した筋細胞をハイブリッド化してこのEPS特殊培養装置で培養することにより、任意に収縮運動をさせることが可能となり、「運動負荷テスト」などのさまざまな高次筋機能の細胞診断もできるようになる。「今回の研究開発により、希少筋疾患のメカニズム探索などの基礎的研究への貢献だけでなく、筋疾患の診断や治療薬剤のスクリーニングといった応用研究への貢献も期待できる」と、研究グループは述べている。
▼関連リンク
・東北大学 プレスリリース